華氏451
(1966年・英仏)
監督:フランソワ・トリュフォー
原作:レイ・ブラッドベリ
脚本:フランソワ・トリュフォー、ジャン=ルイ・リシャール
音楽:バーナード・ハーマン
出演:オスカー・ウェルナー、ジュリー・クリスティ、シリル・キューザック、アントン・ディフリング
「本が禁止」というネタだけで
引っぱったドラマ
少々物足りない……
レイ・ブラッドベリ原作の『華氏451度』の映画化。監督は『大人は判ってくれない』のトリュフォーである。
本が禁止されているために人々は意志力も記憶力も失いつつあるという近未来社会が舞台で、しかもこの社会では密告が奨励されている。おそらく当時の共産主義体制を皮肉ったものだろうが、こういう社会で、隠されている本を見つけては焼き払うという仕事をしている有能な消防士が主人公。そして予想どおりこの消防士が本の魅力にとりつかれるという展開になる。
原作は読んでいないんで正確なところはわからないが、ストーリーにはあまり目新しさは感じない。ただ随所に散りばめられた皮肉が面白いし、ディテールは割合しっかり作られている。
映画の美術については、近未来社会を描こうとしている割には、今見ると非常にレトロな感がある。こういうのは致し方ないところではあるが。音楽を担当するのは、ヒッチコック映画でお馴染みのバーナード・ハーマンだが、音楽があまりに多すぎてかなりうるさく感じる。
また長い話を2時間に押し込めたせいか、途中の展開が急すぎて、結果的にリアリティを欠き違和感がある場面もある。もっとも原作自体ある種のファンタジーなんで、リアリティはそれほど求められていないのかも知れない。名作と言われているようだが、総じて可もなく不可もなしという印象の映画だった。
なおタイトルの『華氏451』だが、本が燃え始める温度だということだ(ちなみに華氏451度は摂氏233度)。
★★★参考:
竹林軒出張所『隣の女(映画)』竹林軒出張所『終電車(映画)』竹林軒出張所『サイコ(映画)』竹林軒出張所『知りすぎていた男(映画)』竹林軒出張所『ねらわれた図書館(ドキュメンタリー)』