世の中、何にでも「見える化」(Vizualization)の波が押し寄せていて、それはそれで良いものではあるが、ここで取り上げるのは「反見える化」計画である。ただしその対象はボールペン。

最近のボールペンはなかなかすごい。特に「ゲルインキ」のものは、書き心地がすばらしいものが多い。
中でも僕の愛用の品はゼブラの「サラサ黒 0.7mm」で、この書き味は、これまで他の筆記具では味わえなかったような桃源郷の境地と言っても良いほどである。もっともインクの減りがやけに速く、何度も何度も交換用のインク(いわゆる「リフィル」)を買うことになる。
ただリフィルを交換して使い続けるというのも、確かにエコロジーの観点から見れば良いことではあるが、しかしあのプラスチックの軸に入れるというのは何とも味気ない。ああいう「見える」タイプのボールペンは1960年台にゼブラが発売したゼブラクリスタルが元祖なんだろうが(「見える見える」の広告が一世を風靡した)、今はあれが確固としたスタンダードになっていて、かなり多くのボールペンがあのデザインを採用している。確かにインクの減りが見えるという点では便利かも知れないが、ボールペンのたたずまいがあまりに安っぽくていけない。そのため、今みたいにリフィルを頻繁に交換するような使い方をするんなら、高級な軸に入れて使ってみたい……という気持ちは随分前から持ち続けていたのだ。ただしそれは、あのサラサのリフィルが使えるという前提である。
実は以前、ちょっと高級感があるボールペン(これもゼブラのものだったと思うが)を愛用していて、折に触れてリフィルを交換しながら使っていたんだが、このボールペン用のリフィルが店に置かれなくなり、しまいには手に入らなくなってしまった。結局中身のないまま、うっちゃっておくことになったのだった。もったいない話である。
ところが先日……とここからいよいよ本題に入るんだが、文房具関連の雑誌を見ていると、リフィルとボールペンには専用のものでなくても場合によっては互換性があるということがわかった。つまり高級軸に書きやすいリフィルを入れるという使い方もできるというわけ。
で、そういう情報をネットで調べてみると、確かに事実のようで、
『筆記具お役立ち情報』によるとサラサは結構互換性が高いようだ。また実際にサラサが入る軸について紹介されているサイト(
noguchan's blog『JIS規格「ゲル J/K/L互換リフィル」で、大人のボールペンを作る』)もあって、具体的に写真入りで紹介されている。このサイトを見ると、オートというメーカーの軸が高級感があってしかもお手頃値段であることがわかる。

で早速、
オートのリバティというボールペン
を何種類か買ってみた。もちろんいつも使っているサラサの軸を入れてみたんだが、これがなんと(当然だが)しっくり収まる。最初からそこに入っていましたというような使い心地で、まったく問題ない。
というわけで、高級ボールペン軸にサラサが入り、羊の皮をかぶった狼になったという話なのであった。なお、このサラサのリフィル(JFシリーズ)だが、サクラクレパスのボールサイン(リフィル:R-GBシリーズ)、ユニボールシグノRT(リフィル:UMR-8シリーズ)、オートのノックゲル(リフィル:KGR-8シリーズ)などとも互換性があり、パイロットのJuiceも互換性があるらしい(未確認)。お気に入りの軸にお好みのリフィルを入れて使うとハイパーなボールペンができあがること請け合いである(もしこのページを見て試した結果ダメだったという人がいても、当方は一切責任を負いません。人と違うことをやろうという人は自分で責任を負うものです)。
それからもう一つ。最初に紹介した、以前使っていたゼブラの「ちょっと高級感があるボールペン」だが、サラサのリフィルを入れてみたらすっぽりと収まった。てことは、何も新しい軸を買わなくても良かったということになる。このあたりは少々複雑な心境である。
さらにもう一つ。以前入手したパーカーのボールペン、非常に高級感があるんだが、書き心地が悪く、しかもインクも出なくなっていたが、こちらも互換性のあるリフィルがあり(いわゆる「パーカータイプ」)、意外に簡単に入手できる。たとえばこちらの
オート替芯クロ/5P
などもパーカータイプである。ダイソーの100円ボールペンにもパーカータイプのリフィル(ゲルインキ)を使ったものがあるらしい。これもネットで調べていてわかったことだ。で早速先日買って入れてみたんだが、こちらもピッタリ収まった。書き心地も、ゲルインキであるため、元のパーカーのものよりはるかに良い。これも今後活用できるかなと思う。
追記:
今回、太さが違うオートの軸を何種類か買って、太さの違うサラサのリフィルを入れて楽しんでいたんだが、0.3と0.5の細いリフィルについては途中からインクが出なくなった。また書き心地も0.7ほどじゃなかった。そんなわけで細いやつはシグノの0.38に交換し、0.5の方はオートの元々のリフィルに戻した。こういうことができるのもまた楽しい。最高の筆記具を使いたいという欲求が満たされ、心持ちが良いではないか。すぐに使えなくなった製品(つまり細いリフィルだが)については腹が立つが……。
参考:
『筆記具お役立ち情報』noguchan's blog『JIS規格「ゲル J/K/L互換リフィル」で、大人のボールペンを作る』竹林軒出張所『万年筆画……』竹林軒出張所『さわの文具店(本)』竹林軒出張所『俺のダンディズム (1)〜(3)(ドラマ)』