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竹林軒出張所

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『地球を食い尽くすのは誰?』(ドキュメンタリー)

地球を食い尽くすのは誰? 〜“人口爆発”の真実〜
(2013年・襖Nikolaus Geyrhalter Filmproduktion)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

人口問題の根底に迫る

『地球を食い尽くすのは誰?』(ドキュメンタリー)_b0189364_840920.jpg 世界中の「有識者」たちは、アジアやアフリカで人口が増えすぎると食糧が不足し地球規模で惨事が起こると主張するが、それについて本当にそうなのか検証しようというドキュメンタリーがこれ。着眼点が非常に面白い。
 このドキュメンタリーでは、このような議論を検証するため、学者やNGO関係者などにインタビューを試み、「人口問題」が、先進国の権力者たちが作り出した幻想だと結論付ける。そしてその背後には、アジア・アフリカに対する差別的な意識が見え隠れすると断定する。実際のところ、人口議論では途上国に対して人減らしをしろと迫っているわけだが、その多くはそれぞれの国の事情が無視された上での議論になっている(世界銀行でも人口抑制策が財政支援の条件にされるらしい)。実際にはアフリカ全体の人口密度は西ヨーロッパの人口密度よりはるかに小さいにもかかわらず、そういう議論が平気で横行する。多分に政治的な意図が働いているというのが、このドキュメンタリーの主張である。地球の環境を良くするには、人減らしをするよりも、資本が主導する環境破壊をやめさせ富が公平に分配されるようにすることが第一で、本来行われるべきそういった議論が人口問題にすり替えられていることを認識することが必要とする。
 人口問題については、個人的には今まで特に疑問を持たなかったが、このドキュメンタリーを見て確かにそうだと納得する。人口問題はあらためて検証しなければならない問題であると感じた。そう言えば、人口学が専門のエマニュエル・トッドも、著書『帝国以後』で世界のほとんどの地域で人口はむしろ減少傾向にあると述べていたことを思い出す。
 シンプルな語り口だが、なかなか奥が深く、目から少しウロコが落ちたドキュメンタリーだった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『帝国以後 - アメリカ・システムの崩壊(本)』
by chikurinken | 2015-03-14 08:41 | ドキュメンタリー
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