そして、兄はテロリストになった(2014年・英Grace Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
身を捨ててこそ
見えてくる真実もある
イスラム教に改宗しテロ未遂の容疑で捕まった兄を持つドキュメンタリー作家が作った作品。
兄の周辺にいた人々にインタビューすることで、なぜ兄のような人間が現れるかについて考察する。
兄は、過激なイスラム指導者、チャウダリーの影響を受けてイスラム教に改宗したというのが製作者が考える直接的動機で、そのためにチャウダリーにもインタビューを敢行する。また、穏健な(普通の)イスラム教指導者兼心理学者とも協力して、一見普通のイギリス人がどのような過程を経て、イスラム戦士へと変貌していくかについて考察する。
テロリストに転向するイギリス人の多くは、満ち足りない少年時代を過ごしそのために現状に不満を持ち続けるが、過激な思想に触れることで、それが弱い自分を変える力を持ちこれによって自身がさながら全能の存在になるかのように錯覚するというのが、製作者が最終的に到達する結論で、右翼の若者とその根底は同じだとする。そのために、右翼の若者にもインタビューを行い、彼らと根っこが同じであることを示そうとする。
製作者が、自らの経験に基づいて冷静に考察した結果が示されるために、作者が展開する主張は非常にわかりやすい。日本ではびこるネトウヨなんかとも共通するような問題で、混迷の現代社会が浮き彫りにされる。製作者が身内の暗部をさらけ出しながら、難題にアプローチした意欲作と言える。
★★★☆
参考:
竹林軒出張所『追跡「イスラム国」(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『フランスで育った“アラーの兵士”(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『少年テロリストたちの“夜明け”(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『“イスラミック ステート”はなぜ台頭したのか(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『T(ERROR) FBIおとり捜査の現実(ドキュメンタリー)』