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竹林軒出張所

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『“イスラミック ステート”はなぜ台頭したのか』(ドキュメンタリー)

“イスラミック ステート”はなぜ台頭したのか(2015年・米WGBH)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

ISの正体見たり

b0189364_8285022.jpg 最近NHKでは「イスラム国」を「イスラミック ステート」または「IS」などと呼ぶようになった。国でもないのに国であるかのような誤解を与えるということらしい。ということでこのドキュメンタリーも、かつて放送されたときは『「イスラム国」はなぜ台頭したのか』というものだったが、このようなタイトルに変更された。
 さてこのドキュメンタリーでは、なにゆえに「イスラミック ステート」が出現したか、そもそも「イスラミック ステート」というのはどういう集団なのかなどといった素朴な疑問に答えるもので、「イスラミック ステート」について知る上で必要な情報源になっている。先日、NHKで放送された『追跡「イスラム国」』よりさらに踏み込んだ内容になっている。
 では、「イスラミック ステート」はそもそもどこから出現したか。この番組では、その核の部分はスンニ派武装組織「イラクのアルカイダ」であるとする。2011年にアメリカがイラクから撤退した後政権に就いたのがシーア派のマリキ首相だが、このマリキ、何を思ったかスンニ派の閣僚たちを次々に粛正し始める。この番組によるとサダム・フセインの支持団体であるスンニ派のバアス党が復活するのを恐れたということだそうだが、結果的にスンニ派の実力者たちがマリキの恐怖政治に耐えられなくなり、「イラクのアルカイダ」と合流したのが「イスラミック ステート」の母体だと言うのだ。
 同時期に隣国のシリアでは、アサド政権対反体制勢力の内戦が始まり、2つの勢力の空白地帯に「イラクのアルカイダ」が勢力を延ばしていった。こうして「イスラミック ステート」は支配地域を拡大し、あげくに油田を制圧することで、資金源を得た。勢いに乗じた「イスラミック ステート」勢力はイラクの首都バグダッド近郊まで侵攻してくるが、あろうことか圧倒的多数の政府軍が逃走したことで、イラク国内にも大きな拠点を築くことができた……というのが現状らしい。
 その間、アメリカのオバマ政権も再三「イスラミック ステート」に対して攻撃を加える機会はあったらしいが、イラク戦争の教訓からか、不用意に介入することに躊躇したらしい。特にシリアについては、静観したいという考え方だったらしい。
 このようなさまざまな要因で「イスラミック ステート」は今日の姿になったわけだが、現在、先進国だけでなく湾岸諸国も「イスラミック ステート」には脅威を感じており、いずれ連合軍が進撃して、支配地域が縮小し元のテロ集団に戻るのではないかということが、このドキュメンタリーを見ると想像できる。ただしドキュメンタリーでは、「イスラミック ステート」は決して侮ることができない存在であると再三繰り返していた。ともかく、「イスラミック ステート」の歴史が非常によくわかるドキュメンタリーで、さすがにWGBH製作だと思わせるような硬派で堅牢な番組に仕上がっていた。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『過激派組織ISの闇(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『追跡「イスラム国」(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『IS 狂気の内幕(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『そして、兄はテロリストになった(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『イスラーム国の衝撃(本)』
竹林軒出張所『イスラム国 テロリストが国家をつくる時(本)』
竹林軒出張所『バシャール・アサド 独裁と冷血の処世術(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『少年テロリストたちの“夜明け”(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2015-02-27 08:29 | ドキュメンタリー
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