日曜劇場 三日間(1982年・TBS)
演出:鴨下信一
脚本:山田太一
出演:若尾文子、山内明、小野寺嗣夫、菊地優子、中島元、岡本史郎、風見章子
80年代の1つの家族を切り取ったスケッチ
これも『東芝日曜劇場』の1本で、脚本は山田太一。昨日も言ったように、これも山田太一の短編集の1本みたいな作品である。
パキスタンに単身赴任している父親が2年半ぶりに家に帰ってくるが、滞在期間はわずか3日間しかない。慌ただしく過ぎていくその3日間を描こうというのがこのドラマ。「とある家族のある一時期を切り取ったスケッチ」といった風情のドラマである。
期間が3日間に凝縮されていることから、この家族に内在するいろいろな問題が一度に目に見える形で出てくるが、このあたりの切り取り方はさすがに山田太一というところである。母(一家の中で言うと祖母)に認知症の傾向が出てきたり、浪人中の息子が自殺未遂を起こしていたりとちょっと大変な状況なんだが、主人公の妻は、他の家庭にも問題はありそれに比べるとまだ良い方と自分と娘を納得させる。夫の方もそこに深く入り込むことは無く、上澄みをさらっただけで結局仕事にもどってしまう。当時の時代を反映したような家族像が今見ると非常に新鮮で面白い。こういう作品こそが時代を超えたテレビドラマと言えるんだろうと納得する。派手な面白さはないが、見終わった後、いろいろと思いをめぐらせるような作品であった。中年の若尾文子が、若い頃の小悪魔的な要素がなく落ち着いていて、非常に魅力的。山田作品に出演するのは『午後の旅立ち』以来だが(おそらくこの2本だけ)、日曜劇場には割合頻繁に出ていたようだ。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『日曜劇場 終りの一日(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 それからの冬(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 風前の灯(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 縁結び(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 秘密(ドラマ)』竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』