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竹林軒出張所

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2014年ベスト

 今年も恒例のベストです。例年どおり「僕が今年見た」という基準であるため、各作品が発表された年もまちまちで、他の人にとってはまったく何の意味もなさないかも知れませんが、個人的な総括ですんで、ひとつヨロシク。
(リンクはすべて過去の記事)

今年見た映画ベスト5(67本)
1. 『炎628』
2. 『細雪』
3. 『山椒大夫』
4. 『プライベート・ライアン』
5. 『もうひとりのシェイクスピア』

b0189364_7225434.jpg 今年も再見の映画が2本。昨年同様、過去見て感心した映画を生きている間にもう一度見ておこうという意識が働いているわけ。
 『炎628』は絶版だったDVDが今年再版されたため20年ぶりに見ることができた。ソビエト映画らしく無骨な映画ではあるが、虐殺にあう側から撮られたシーンがどれも強烈で、戦争を膚で感じさせてくれる傑作である。
 戦争を膚で感じられるといえば『プライベート・ライアン』も同様で、臨場感のあるシーンが次々に繰り出されるが、結局は予定調和なヒューマニズムに落ちついてしまう。そのあたりはハリウッド映画の限界か。
 『細雪』も見るのは二度目で、映像の美しさも相まって空気感が大変心地良い。何度も目にしたくなる、と言うか体感したくなる映画である。
 『山椒大夫』は元祖『グラディエーター』と言えるようなストーリーで、細部までしっかり作られていて往年の大映映画のパワーを感じられた。
 『もうひとりのシェイクスピア』も細部までしっかり作り込まれているという印象が強く、当時の風俗の再現がすばらしい。しかも「シェークスピア別人説」を実にさりげなくドラマに盛り込むなど見所が非常に多い作品だった。

今年見たドラマ・ベスト5(33本)
1. 『王様のレストラン』
2. 『アオイホノオ』
3. 『夏子の酒』
4. 『再会』
5. 『俺のダンディズム』

b0189364_824789.jpg こちらも再見のドラマが多い。『王様のレストラン』と『夏子の酒』は90年代屈指のドラマなんで、僕としては今さらなんだが、特に『王様のレストラン』は何度見ても飽きないんで、やはりトップに据えるべきかなと思う。
 『再会』は、10年以上前に放送された山田太一のドラマで、これも今回で見るのは三度目だが、登場人物の心理が非常にうまく描かれているだけでなく、セリフのおかしみが秀逸で、傑作ドラマの1本である。
 今年放送されたドラマの中では『アオイホノオ』が最高で、これは島本和彦のマンガが原作のドラマだが、マンガ的な面白さをそのまま映像化し、そこにさらにドラマ的な面白さもこれでもかと盛り込んだ福田雄一の演出が光る。遊びの要素も非常に多いが、それでいて青春のほろ苦さや他人の才能に対する驚きや嫉妬まで描かれていて、アメリカ映画の『ラストショー』や『アマデウス』の要素までが盛り込まれている。そういう点でも、原作をはるかに超えているという印象である。
 同じくテレビ東京の深夜枠で放送された『俺のダンディズム』もよくできていて、基本的にはカタログ的な番組でありながら、十分楽しめるドラマに仕上げたスタッフの腕力に感心する。いずれにしてもテレビ東京の深夜枠からは目が離せない。

今年読んだ本ベスト5(80冊)
1. 『悪童日記』
2. 『英国一家、日本を食べる』
3. 『白文攻略 漢文法ひとり学び』
4. 『漫画・日本霊異記』
5. 『全国アホ・バカ分布考』
番外. 『ミツバチの会議』

b0189364_7563258.jpg 『悪童日記』は無類の面白さで、小説の面白さが凝縮されている。文体自体も凝縮されたようなシンプルなもので、大変魅力的である。
 『英国一家、日本を食べる』は、英国人ジャーナリストの日本食見聞記であるが、潜入している先が相撲部屋であったり「ビストロスマップ」の収録現場であったり、日本人でもなかなか入り込めないような場にしなやかに赴いて日本人の食を探るという試みが非常に興味深い。英国人らしいユーモアあふれる記述も魅力的で、電車の中で読んでいて思わず笑ったという箇所もある。続編『英国一家、ますます日本を食べる』(といっても元は1冊の本だが)もお奨め。
 『白文攻略 漢文法ひとり学び』は、前にも書いたが、受験生時代にこういう本があったらよかったのにと思うような本で、漢文入門書の定番となるべき本である。もう一度漢文を勉強し直したいという人に最適の一冊である。
 『漫画・日本霊異記』は、日本最古の説話文学『日本霊異記』をマンガ化したものだが、原作のどぎつさをとぼけた味の絵が中和して、独特の世界を作っている。『日本霊異記』を原作で読んだだけではなかなか気が付きにくい要素を巧みに翻案しているという点でポイントが高い。原作に内在するような日本人の性に対するおおらかさも感じられる。
 『全国アホ・バカ分布考』は、テレビ番組『探偵!ナイトスクープ』のネタが元になっているが、同番組のプロデューサーがこれをさらに進めて「アホ・バカ」などの罵り言葉に方言周圏論が適用できることを示した快著である。同時に方言学の素人である著者から見た方言学の現状までがわかるようになっており、そういう点でも大変興味深い。しかも「アホ」や「バカ」の語源にまで追究するという姿勢は、到底「素人の書いた方言学の本」と言えない凄みがある。
 『ミツバチの会議』は、内容的には非常に興味深いものだったが、翻訳がひどく、大変読みづらかったために「番外」とした。地道な観察と実験によって、ミツバチの分蜂が民主的な手順で行われていることを示した研究は学術的に見ても画期的で、いずれそれなりの地位を占めるだろうと思うが、それほどの本なのにこの翻訳はないだろうと思う。出版社にも配慮がほしいところである。

今年見たドキュメンタリー・ベスト5(53本)
1. 『精進料理大全 〜大徳寺 禅と茶 もてなしの心〜』
2. 『若きビジネスマンが挑んだ農業再生550日』
3. 『辞書を編む人たち』
4. 『カラーでよみがえる東京』
5. 『ヒトラー 権力掌握への道 前後編』

b0189364_8454577.jpg どれもNHKで放送されたもので、『若きビジネスマンが挑んだ農業再生550日』、『辞書を編む人たち』がETV特集、『カラーでよみがえる東京』がNHKスペシャル、『ヒトラー 権力掌握への道 前後編』がBSドキュメンタリーである。といっても『カラーでよみがえる東京』、『ヒトラー 権力掌握への道』はどちらも古い映像に着色してカラー化するという企画から生まれたドキュメンタリーで、他にも『カラーでよみがえる第一次世界大戦』も同じコンセプトの番組である(これも見応えがあった)。『若きビジネスマン』は、前にたまたま読んでいた『マイファーム 荒地からの挑戦』で、『辞書を編む人たち』の方はドキュメンタリー『ケンボー先生と山田先生』や映画『舟を編む』でそれぞれ触れていた世界だったため、見る前から関心があった分野である。ただそれぞれのドキュメンタリーは、そういった既知の素材をさらにいっそう面白くしていて、やはり現実というのは一筋縄でいかない、百聞は一見にしかずだなとあらためて感じさせる番組になっていた。製作者の力量を感じた2本だった。
 『精進料理大全』は、これはもうアーカイブとして絶対に残しておきたいドキュメンタリーで、DVD化してほしい素材である。短いドキュメンタリーではあるが、精進料理の精神に触れることができる貴重な番組である。

 というところで、今年も終了です。今年も1年、お世話になりました。また来年もときどき立ち寄ってやってください。
 ではよいお年をお迎えください。

参考:
竹林軒出張所『2009年ベスト』
竹林軒出張所『2010年ベスト』
竹林軒出張所『2011年ベスト(映画、ドラマ編)』
竹林軒出張所『2011年ベスト(本、ドキュメンタリー編)』
竹林軒出張所『原発を知るための本、ドキュメンタリー2011年版』
竹林軒出張所『2012年ベスト』
竹林軒出張所『2013年ベスト』
by chikurinken | 2014-12-30 09:12 | ベスト
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