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竹林軒出張所

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『過ぎし江戸の面影』(本)

過ぎし江戸の面影
双葉社スーパームック

「いろいろな素材から寄せ集めて
味付けしちゃいました」という本


『過ぎし江戸の面影』(本)_b0189364_7465168.jpg タイトルや内容から判断すると多分に『逝きし世の面影』を意識した本なんだろう。内容は『逝きし世の面影』に出てきた記述を孫引用してコメントを付けたようなもので、あまり目新しさはない。昔の日本を映した写真や図版をたくさん取り込んだのがひとつの目玉なんだろうが、こういった図版もすでに発表されているものばかりで、こちらも目新しさはあまりない。本書最大の目玉は、モノクロ写真や着色写真にコンピュータを使って新たに色付けしたという部分なんだろうが、これも写真によっては色がギトギトしていて汚いものもある。
 というわけで全編中途半端な印象は否めないが、『逝きし世の面影』を読むときの資料集みたいにして使えば、利用価値はあると思う。それにこういった分野の知識をあまり持っていない人にとっては入門用として格好の素材ではある。ただし、現代日本を持ち上げるような記述が多いのはちょっと疑問。この本で紹介されているような江戸情緒は、現代人によってことごとく破壊されつくしたものであって、江戸・明治初期の日本に当時の西洋人(現代の日本人と通じるものがあると思う)が瞠目したからといって、現代日本がすばらしいということにはならない。こういう素材が妙なナショナリズムに利用されるのはまったくもって愉快ではない。自国のことをすごいすごいなどと声高に言っている輩はよその国の人からは尊重されないよと偏狭なナショナリストたちに忠告してやりたいところで、そのようなナショナリズム本として扱われないことを切に望む。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『百年前の日本(写真編)(本)』
竹林軒出張所『カラーでよみがえる東京(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『戦前・戦争(本)』
竹林軒出張所『幕末日本探訪記(本)』
竹林軒出張所『シュリーマン旅行記 清国・日本(本)』
竹林軒『「ラスト・サムライ」に見る「逝きし世の面影」』
竹林軒出張所『にっぽん 微笑みの国の物語 前編(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『にっぽん 微笑みの国の物語 後編(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『日本その日その日(本)』
竹林軒出張所『美しき日本の面影 小泉八雲のアルバム(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『100年前の世界一周(本)』

by chikurinken | 2014-10-29 07:48 |
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