日曜劇場『おやじの背中』
第7話「よろしくな。息子」(2014年・TBS)
製作:八木康夫
演出:清弘誠
脚本:山田太一
出演:渡辺謙、東出昌大、余貴美子、笹野高史、柴田理恵
「1時間ドラマ」らしく
こじんまりとまとまったドラマ 第7話は山田太一脚本ということで、敬意を表して別枠にした。山田太一が1時間ドラマを書くのも久しぶりではないかと思う。ま、考えてみれば倉本聰だってそうだし、他の脚本家だってそうだ。今どき1時間ドラマ自体があまりないから。
山田太一もかつては東芝日曜劇場で何本かシナリオを書いていて、中にはなかなか凝ったものもあり、1時間ドラマといっても侮れないのが氏の作品。本作は、山田作品らしい独特のセリフがよく出てくるが、1時間ドラマとしてはよくまとまっている。また、ドラマで使われているモチーフが、介護だったり、パワハラだったり、コンビニだったりするのはいかにも今の時代を反映していると言える。
冒頭の部分は、
『深夜にようこそ』を思わせるシーンで、言ってみれば使い回しである。ただし冒頭のシーンに見る者を引きつける設定を持ってきているのは、さすがにベテランらしい巧みさである。そう言えば、これまで見てきたこのシリーズで、冒頭から心を掴まれるようなシーンが出てきたのは、山田太一と倉本聰だけだ。冒頭にインパクトのあるシーンを持ってくるのは、シナリオ(特に短編、中編)の常道だと教わったもんだが……。
ストーリー展開については、(近年のドラマにやたら多い)毒々しさもなく、割に気持ちの良い進み方をする。このあたり東芝日曜劇場風である。登場人物の職業は、看護師の派遣業や靴職人という少し毛色の変わった職種で、こういう馴染みのない世界を見せてくれるのも山田太一らしい。これまでもさまざまな世界を、綿密な取材に基づいた上で見せてくれた山田太一の面目躍如である。
クライマックスについては少々不満も残るが、よくまとまった佳作と言って良いのではないか。このシリーズでは、第3話(倉本聰)、第6話(橋部敦子)とこの第7話が比較的よくできていたが、企画自体なかなか面白いんで、またこういうのをやっていただきたいと思う(それぞれの脚本家には負担だろうが)。このシリーズ、この後も第10話まで続くらしいが、第8話以降(池端俊作、井上由美子、三谷幸喜脚本)は見るかどうかまだ決めていない。正直なところ食指が動かない。倉本聰、山田太一の登場ですでに一定の役割を果たしたというところか。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『おやじの背中(2)〜(6)(ドラマ)』竹林軒出張所『深夜にようこそ(1)〜(4)(ドラマ)』竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2 続き(補足)』竹林軒出張所『日曜劇場 縁結び(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 風前の灯(ドラマ)』竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』