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竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『脱ネット・スマホ中毒』(本)

脱ネット・スマホ中毒
遠藤美季著、高原玲漫画
誠文堂新光社

対談形式のネット依存啓蒙書

『脱ネット・スマホ中毒』(本)_b0189364_7574183.jpg タイトルは『脱ネット・スマホ中毒』だが、本書で扱われているのは、厳密に言えばネット・スマホ依存症。
 ネット依存に関連する任意団体の主宰者である著者が、さまざまなネット依存事例を紹介する。全6章構成で、各章ごとに著者+2人が対談し、さまざまなネット依存を取り上げて議論していくという体裁になっている。適宜症例を描いたマンガが挟まれる。マンガの作画は質が高い。
 紹介されるのは、LINEやSNSへの依存、ソーシャルゲーム依存、ネット恋愛の他、ネット依存が原因で家庭が破綻した例、家庭内暴力が引き起こされた例なども取り上げられる。すべて対談形式で読みやすいが、読みやすいという以上のメリットは感じられない。かえってまだるっこしさを感じる部分も多い。
 街で見かける若者たちもスマホをいじっている人間がやたらに多いことを考えると、ネット依存人口は想像以上なのかも知れない。この本に接して特にそういう思いを強くした。親側の感覚から考えると、よく中高生にスマホなんか与えるよなーと思うんだが、自分の子供に訊くとスマホを持っていないのは超少数派なんだそうだ。依存当事者だけでなく、大人の方もスマホについて何も考えていないということがよくわかる。新しいモノがまわりに登場したら、一歩引いてそれについて検討してみるというのも大切なんじゃないかな。
 この本については、正直、内容的にはあまり目新しさを感じなかったが、ネット・スマホ依存の状況が思った以上にひどいということはよくわかった。まわりにネット依存者がいる人なんかは、とっかかりとしてこの本を読むのもアリなんじゃないかと思う。途中、ネット依存度を計測する指標みたいなものもある。
★★★

参考:
竹林軒出張所『スマホ脳(本)』
竹林軒出張所『僕らはそれに抵抗できない(本)』
竹林軒出張所『スマホ依存から脳を守る(本)』
竹林軒出張所『スマホはどこまで脳を壊すか(本)』
竹林軒出張所『“幸せ”に支配されるSNSの若者たち(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『失踪日記2 アル中病棟(本)』
竹林軒出張所『実録! あるこーる白書(本)』
竹林軒出張所『ポテチを異常に食べる人たち(本)』
竹林軒出張所『私、パチンコ中毒から復帰しました(本)』

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以下、以前のブログで取り上げたネット依存症関連の本。

(2005年6月19日の記事より)
インターネット中毒 まじめな警告です
キンバリー・ヤング著、小田嶋由美子訳
毎日新聞社

『脱ネット・スマホ中毒』(本)_b0189364_835869.jpg インターネット中毒(依存症)というのはわりと新しい概念かと思っていたが、この本は1998年、つまり今から7年前に出された本だった。
 「インターネット中毒」という言葉はかなりセンセーショナルであるが、実際に依存してしまうのは、チャットとネットゲームがメインらしい。厳密に言えば、「バーチャルリアリティ依存症」という言葉が適切かと思う。
 「インターネット中毒」の問題性は、それまでの生活、つまり仕事上の関係(地位)や家族関係などが崩壊してしまうことだ。チャットを例に取ると、チャットの相手に入れ込んでしまい、家事や仕事をないがしろにするようになる。睡眠時間も削ることで生活パターンも崩壊してしまい、あげくに家族を捨てて家を出るというところまでいってしまう(ケースがある)らしい。こうやって実際にチャット相手(の恋人)と駆け落ちしても、現実の相手は生身の人間であって、チャットを通じて作ったイメージとは当然そぐわないので、その新しい関係も1、2週間で破綻する。結局残ったのは、完全に崩壊した自分の社会性のみということになる。仕事上の関係や家族関係は取り返しがつかないもので、自分にとって一番大事なものだったということにそのとき気付くのである。
 著者は、このような破綻までいくケースは絶対に避けなければならず、そのためにインターネットに依存するのではなく、また完全にやめてしまうのではなく(完全にやめると禁断症状が出て逆戻りするケースが多いらしい)、良い関係を築く(つまり節度を持って使えるようになる)ことが大事であると主張する。
 依存症関連の本は、症例をいろいろ示すのが通例だが、この本もご多分に漏れず、多数の症例が出てくる。また著者自身の経験も紹介されている。チャットに(プチ)依存したことがあるらしい。だが、この本の素晴らしいところは、単なる症例紹介本にとどまらず、処方箋が詳細かつ具体的に示されている点である。しかも、患者が本人の場合、配偶者の場合、部下の場合、子供の場合など、ケースごとに非常に細かく分類されている。著者は、心理カウンセリング業を営んでおり、しかも自身でインターネット依存の相談を受けるホームページを開設しているらしい。本書執筆の動機も、患者を救済したいという欲求から来ているのではないかと思わせるものがある。大変真摯で好感が持てる。
 ネット中毒を早い段階で警告しその処方箋を示した点で、非常に価値のある本だ。
★★★☆

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(2005年6月19日の記事より)
『脱ネット・スマホ中毒』(本)_b0189364_7594923.jpgネット依存の恐怖
牟田武生著
教育出版

児童カウンセラーが取り上げた、子どもたちに見られるネット依存症の現実。
結果的に、「こういう現実がありますよ」という紹介程度で終始しているのが残念だ。最後に処方箋も載っているが、間違っていないのかも知れないがなんとなく眉唾な印象だ。全体を通して分析が甘いからだろう。
子どもの問題としてネット依存を取り上げた点で評価できるが、社会問題としてのネット依存という点では、先発の『インターネット中毒』(1998年刊、本書は2004年刊)の方がはるかに優れているし、読み応えがある。
★★☆
by chikurinken | 2014-07-30 08:02 |
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