史上最大の作戦
(1962年・米)
監督:ケン・アナキン、ベルンハルト・ヴィッキ、アンドリュー・マートン
原作:コーネリアス・ライアン
脚本:コーネリアス・ライアン、ジェームズ・ジョーンズ、ロマン・ギャリー、デヴィッド・パーサル、ジャック・セドン
出演:ジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダ、ジャン=ルイ・バロー、ロバート・ライアン、リチャード・バートン、ロバート・ミッチャム、アルレッティ、ショーン・コネリー、ポール・アンカ
様式化された戦闘は随分退屈だった
ノルマンディー上陸作戦を再現した超大作映画。超豪華キャストも異例なら、監督が3人、脚本家が5人というのも異例。しかし現場の責任者が3人いてまとまった映画になるわけがなく、内容はバラバラで、単にエピソードの羅列になってしまった。
原作がノンフィクション(『The Longest Day』)だからか、全編モノクロ映像のドキュメンタリー風のタッチで描かれているが、戦闘シーンは、今見るとリアリティも迫力もなく、
『プライベート・ライアン』のノルマンディー上陸作戦の描写と比べると、はなはだチープに映る。『コンバット』的というか、撃たれた人はその場に倒れるという決まり事に則ったようなチャンバラ風の様式化された演出で、戦場の臨場感、緊迫感はほとんどない。それにドイツ軍の戦闘員が少々間抜けに描かれているのも『コンバット』風である。実はこの映画、米軍、英軍、フランスのレジスタンス以外にも、ドイツの作戦本部もしっかり描かれていて、丁寧な作りに好感が持てると思いながら見ていたのだが、戦闘シーンでは『コンバット』になる。やはりそのあたりは当時の戦争映画の限界なのか。
映画のストーリーは、時系列を追いながらノルマンディー上陸作戦のいろいろな局面を描いていくというもので、先ほども言ったようにエピソードの羅列で終始している。もちろん大局的には繋がりがあるものの、各シーン、バラバラの印象はぬぐえない。キャストはやけに豪華だが、どのキャストもチョイ役みたいな扱いである。そりゃまあ、エピソード集みたいな映画だから仕様がないと言えば仕様がない。フランスの名優、ジャン=ルイ・バローまで出ているんだが、あまりにチョイ役なんで僕などエンディング・ロールまで気が付かなかった。しかも『天井桟敷の人々』で相手役だったアルレッティと夫婦役をやっていたというんだから驚きである。でも気付かなかった。なんとももったいない。ショーン・コネリーやリチャード・バートンにも気が付かなかった(さすがにジョン・ウェインとヘンリー・フォンダには気が付いた)。だが、役者をこんな風に餃子の具みたいに使っても良いものかとは思う。せめて八宝菜の具程度の扱いをしたらどうなんだろうか。そういうようなことを感じるほど、ぞんざいな使い方である。それにどの役者もまったく生かし切れていないように思える。
世間では名作で通っているが、僕自身はまったく感じるところがなく、実際最後の1時間は眠くて眠くて仕方なかったほどである。映画なんだからもっと映画の文法に則って作った方が良かったんじゃないかと思う。少なくとも、原作者とは言え、ノンフィクション・ライターが、ドラマの脚本に加わるというのはいかがなものかと思う。
★★★参考:
竹林軒出張所『D-Day 壮絶なる戦い(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『プライベート・ライアン(映画)』竹林軒出張所『トラ・トラ・トラ(映画)』