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竹林軒出張所

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『春琴抄』(映画)

春琴抄(1976年・東宝、ホリプロ)
監督:西河克己
原作:谷崎潤一郎
脚本:西河克己、衣笠貞之助
出演:山口百恵、三浦友和、中村竹弥、風見章子、井原千鶴子、津川雅彦、小松方正、名古屋章、榊原郁恵

清純派コンビが
谷崎の変態性に挑む


『春琴抄』(映画)_b0189364_7372734.jpg 谷崎潤一郎原作の同名小説の映画化。これも過去何度も映画化されている。脚本に衣笠貞之助の名前があることを考えると、1961年に山本冨士子主演で製作された衣笠貞之助監督作品『お琴と佐助』(原作は『春琴抄』)の脚本を流用したのではないかと推測される。そのせいか、ただのアイドル映画と思えないような重厚な映画に仕上がっている。
 元々この映画は百恵-友和のゴールデン・コンビを起用したアイドル映画で、監督もアイドル映画ばかり撮ってきた西河克己である。ソツはないが面白味もないという映画が多いのがこの監督の特徴で、僕自身は何の期待も抱かないが、この映画については割合よくできていて、そういう点で少々意外だったんである。
 ストーリーは、僕自身も知っていたほど有名で、盲目のこいさん(山口百恵)に献身的に付きそう元・丁稚、佐助(三浦友和)という二人の関係がテーマだが、この関係が度を越していて異様なのがいかにも谷崎流。嗜虐的な好みが色濃く反映されていて、マゾ嗜好がある人にはたまらんだろう。谷崎潤一郎もこういった話を妄想しながら楽しんでいたんだろうと推測されるが、とは言え物語としての完成度は高い。もちろん僕自身はまったく共感を覚えないが、なんだか妄想も完成度が高くなると芸術性を帯びてくる。なるほどこれが「耽美主義」なんだなとあらためて認識した次第。
 キャストについては、山口百恵が独特の存在感を示しており、やはりこの人は「持っている」なと思う。特にうまい演技と言うわけではないんだが、佐助に対して「あかん」というのがエロスを感じさせ、とても良い。三浦友和も、山口百恵の相手役をするときはいつもだが、安定感があって、彼女の魅力をうまく引き出している。この二人がコンビで起用されたのは、映画、ドラマ合わせて15本以上になるが、それもよくわかるというもの。この『春琴抄』は、彼らの共演作の中でもよくできている部類だと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『伊豆の踊子(映画)』
竹林軒出張所『潮騒(映画)』
竹林軒出張所『風立ちぬ(映画)』
竹林軒出張所『野菊の墓(ドラマ)』
竹林軒出張所『ホワイト・ラブ(映画)』
竹林軒出張所『古都(映画)』
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『瘋癲老人日記(映画)』
竹林軒出張所『刺青(映画)』
竹林軒出張所『卍(映画)』
竹林軒出張所『痴人の愛(映画)』
竹林軒出張所『鍵(映画)』
by chikurinken | 2014-05-30 07:38 | 映画
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