ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『痴人の愛』(映画)

痴人の愛(1967年・大映)
監督:増村保造
原作:谷崎潤一郎
脚本:池田一朗
出演:小沢昭一、安田道代、田村正和、倉石功、村瀬幸子

主人公の気が知れないし、
見てられない


b0189364_892981.jpg 谷崎潤一郎原作の同名小説の映画化。内容がセンセーショナルなためもあって過去何度か映画化されている。
 主人公の奔放な女、ナオミを安田道代、その女に振り回されて身を滅ぼす男を小沢昭一が演じる。映画としてはよくできているが、マゾヒズムやフェティシズムなどの特異な嗜好のある人ならいざ知らず、内容が僕にはどうにも不快で、主人公の気が知れない上、とても見ていられない。原作は高校生時代読んだんだが、小説ではそれほど感じなかった不快さが直撃してくる。映像化されて、より具体的にイメージされるようになったためか、それとも映画自体にそういう要素があったためか知らんが、ともかくあまりに気分が悪く、途中でいったん見るのをやめたほどだ。
 このストーリー自体ちょっと特異なので、この映画を見た後、著者の周辺に似たような話があったのかという興味が沸き上がってきたが、なんとWikipediaによると「谷崎は連載再開の断り書きで、この小説を「私小説」と呼んでいる」とのこと。ということは、実際にこれに近いことを経験したということになる。よくよく調べてみると、谷崎自身、何でも妻の妹に横恋慕していて、その妹というのがこのナオミみたいな女性だったというのだ。あげくに谷崎は、妻を友人の佐藤春夫に譲ることにした上、しかもその後撤回し、佐藤春夫と揉めるなどという事件も起こしていたらしい(小田原事件)。面白すぎるぞ、谷崎潤一郎! 『痴人の愛』は好みじゃないが、谷崎自身には大いに興味が湧いた。しかもそれをネタに小説を書くなんて、なんて見上げた作家だ。
 映画自体は、小沢昭一と安田道代が好演しており、特に安田道代は凄みがあって、すばらしい「ナオミ」像を打ち立てている(先ほども言ったように個人的にはまったく受け付けないが)。なんでも安田道代はそれまで清純派で売っていたらしいのだが、この映画でイメージを変えることに成功したと言う。谷崎潤一郎同様、大したプロ根性である。安田道代のセミヌードも大量に出てくる。乳首が見えている画像と映像は少なく、あるにはあったが顔が映っていなかったんで、おそらくそのシーンおよび写真は吹き替えだろうと思う。もっともヌードが出てきたところでエロ的な印象はあまりなかったというのが個人的な実感ではある。
★★★

参考:
竹林軒出張所『刺青(映画)』
竹林軒出張所『卍(映画)』
竹林軒出張所『鍵(映画)』
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『氷点(映画)』
竹林軒出張所『谷崎万華鏡(本)』

by chikurinken | 2014-05-28 08:09 | 映画
<< 『春琴抄』(映画) 『卍』(映画) >>