男たちの旅路 第3部「第一話 シルバー・シート」
(1977年・NHK)
演出:中村克史
脚本:山田太一
出演:鶴田浩二、水谷豊、桃井かおり、笠智衆、加藤嘉、藤原釜足、殿山泰司、志村喬、柴俊夫、佐々木孝丸、村上不二夫
強烈なメッセージは
「老い」に対する畏れの現れか 山田太一が脚本を書いた『男たちの旅路』の第3部の1本。山田作品は、この辺からメッセージ性が非常に強くなる。この「シルバー・シート」はまさにその走りとなった作品と言ってよい。
公的な老人ホームに住む老人たちが社会に対して不満を表明するというストーリーで、「老い」の問題を正面から突きつける。その後の「老い」三部作(
『ながらえば』、
『冬構え』、
『今朝の秋』)への序章みたいな位置付けになっている。当時まだ若かった山田太一なりの老人問題の扱い方で、三部作と同様、「老い」に対して非常にシビアに捉えているのが印象的。ただし脚本家自身も「老い」に対してどう向き合ってよいかわからなかったのか知らないが、なんだかはっきりしない。「老い」をどう捉えてどのように向き合うべきか、結局茫洋としたまま終わってしまった。『男たちの旅路』第4部「第三話 車輪の一歩」ではっきりと示された明確な回答とは対照的である。それでも個人的には、『男たちの旅路』の中ではこの「シルバー・シート」と「車輪の一歩」の2本が双璧で、ダントツだと思っている。
老人役の俳優陣は超豪華で、笠智衆、志村喬、加藤嘉、藤原釜足、殿山泰司と勢揃いする。それぞれ小津映画、黒澤映画、新藤(兼人)映画で中心的な役割を果たしてきた名優ばかりで、この映画でも強烈な存在感を放っている。
『にっぽんのお婆あちゃん』の豪華キャストぶりをしのぐ勢いで、テレビドラマでこれだけ名優を揃えたというのも、当時のNHKの意気込みが伝わってくるようである。そのあたりの事情は
『100年インタビュー 脚本家 山田太一』でも存分に語られているので、興味のある向きは参照されたい。また、本作についても脚本家自らが語っている。いずれにしても、本作が日本のテレビドラマ史において画期になったのは間違いないと考える。
第32回芸術祭ドラマ部門大賞受賞
★★★☆参考:
竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「非常階段」(ドラマ)』竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「路面電車」(ドラマ)』竹林軒出張所『男たちの旅路 第1部「猟銃」(ドラマ)』竹林軒出張所『男たちの旅路 第2部「廃車置場」(ドラマ)』竹林軒出張所『男たちの旅路 第2部「冬の樹」(ドラマ)』竹林軒出張所『ながらえば(ドラマ)』竹林軒出張所『冬構え(ドラマ)』竹林軒出張所『今朝の秋(ドラマ)』竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『喜劇 にっぽんのお婆あちゃん(映画)』竹林軒出張所『老優たちの日々(ドキュメンタリー)』