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竹林軒出張所

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『王様のレストラン』(1)〜(11)(ドラマ)

王様のレストラン(1995年・フジテレビ)
演出:鈴木雅之、河野圭太
脚本:三谷幸喜
出演:松本幸四郎、筒井道隆、山口智子、鈴木京香、西村雅彦、小野武彦、梶原善、白井晃、伊藤俊人、田口浩正、杉本隆吾、ジャッケー・ローロン、中村嘉葎雄

三谷幸喜の最高傑作…ただし唯一の

『王様のレストラン』(1)〜(11)(ドラマ)_b0189364_824789.jpg これまで何度も見たドラマだが、今回また全部通しで見た。おそらく90年代屈指のドラマであり、三谷幸喜の最高傑作である。というより、三谷幸喜はこの1本だけと言っても良い。実はこのドラマをリアルタイムで見た後、この作家に非常に注目したせいで、その後放送される三谷脚本ドラマをしばらくの間ほとんどすべてチェックしていたんだが、残念ながらこのドラマを超えるものはなかった。実際は「このドラマを超える」どころかドラマとしてつまらないものも非常に多かったのだった。だからかえって、当時これだけのドラマができあがったことが意外なんである。何が良かったのかわからないが、脚本、演出、キャスト、どれをとっても高いレベルで統一され、非常に完成度の高い作品に仕上がった。
 全11回の1クールのドラマで、基本的には継続する話だが、各回で完結したドラマになっている。遊びの要素が非常に多くいかにも現代日本の舞台劇という感じで、そういう点、舞台人の三谷幸喜らしいと言える。キャストは今となってはドラマの常連になっている人ばかりだが、梶原善、白井晃、伊藤俊人らは、このドラマが出世作になったとも言える。劇団、東京サンシャインボーイズで三谷と繋がりがあった人々がこの頃三谷ドラマによく出ていたが、梶原善と伊藤俊人はその口である。西村雅彦も(当時すでに名前が出ていたが)東京サンシャインボーイズ繋がりである。
 どのキャストも非常に個性的で、一見あまり個性的でない筒井道隆まで強烈な個性を発揮していて、それもドラマの価値を高める結果になっている。なにより(ドラマの上での)キャスト同士の横の繋がりがとても緊密で、実際の1つのコミュニティがそのまま再現されているような感じがするのもこのドラマの優れた点である。そのため、どの登場人物にも親近感が湧く。また、各回ごとに話の中心となる人物が入れ代わるという方法論も効果的で、脚本の質の高さを物語っている。
 落ちぶれた元高級フレンチ・レストランを立て直すという趣向も面白い。もちろんこういう話は、それなりの説得力というかリアリティがなければはなはだ安っぽい話になってしまうものだが、このドラマのストーリーについては非常に説得力があって(レストランのプロが見ればどうかわからないが)破綻はない。取り上げられるエピソードはよくよく考えると荒唐無稽なものもある(たとえばカラーひよことか、政府レベルの会合が普通のレストランで行われるとか)が、展開が自然なのですべてそのまま受け入れることができる。嘘の付き方が巧妙とでも言えば良いのか……ちなみにこれはフィクションのドラマとしては最高の賛辞である。
 いずれにしても何度見ても飽きないドラマで、少しでも見始めると最後までそのまま引っぱられてしまうような、そういう引力が強いドラマでもある。こういうドラマは今となってはあまり存在しないが、それはまた別の話。
★★★★

参考:
『王様のレストラン ファンサイト』
竹林軒出張所『夏子の酒(ドラマ)』
竹林軒出張所『風雲児たち 蘭学革命篇(ドラマ)』
竹林軒出張所『鎌倉殿の13人 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『鎌倉殿の13人 (2)〜(48)(ドラマ)』

by chikurinken | 2014-05-14 08:03 | ドラマ
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