ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『ラストデイズ「忌野清志郎×太田光」』(ドキュメンタリー)

ラストデイズ「忌野清志郎×太田光」(2014年・NHK)
NHK総合

『カバーズ』の秘密に迫る

『ラストデイズ「忌野清志郎×太田光」』(ドキュメンタリー)_b0189364_7353446.jpg 忌野清志郎をテーマにしたドキュメンタリーで、忌野清志郎の命日である5月2日に放送された。爆笑問題の太田光の目線で忌野清志郎を取り上げるという番組だが、太田光を起用する意味はあまり感じなかった。
 忌野清志郎(およびRCサクセション)は、1988年発売の『カバーズ』以来、メッセージ性の強い楽曲を発表するようになったが、その辺の事情を追求しようというのがこの番組のコンセプト(アルバム『カバーズ』についてはWikipediaの記述を参照)。『カバーズ』に焦点当てるなんてなかなかヨイじゃないのと思って見ていたが、どうもなんとなくだが、あの『カバーズ』が「清志郎の変節」であるかのような扱いになっているようで少々戸惑う。僕自身は『カバーズ』以降がキヨシローであり、それ以前のRCサクセションの歌なんてまったく興味がない。内容が子どもっぽく面白味もまったく感じない。むしろ稚拙さを感じるほどだ。僕が忌野清志郎に入っていったのは元々タイマーズ(忌野清志郎が率いる覆面バンド)からで、あの反骨精神とウィットと毒が大いに気に入ったからである。それまでロックは好きではなかったが、「なるほどこれがロックか」と納得させてくれたのが忌野清志郎だった。したがって、僕にとっての忌野清志郎は1988年から90年代が黄金時代なのである。
 あのアルバムを「変節」と感じている代表選手は泉谷しげるで(この番組にもインタビューで登場)、彼自身、素人時代から清志郎の大ファンだったということなんで、大きな画期になったあのアルバムに疑問を持つのは大いに理解できるところではある。彼も『カバーズ』に参加しているし、清志郎の理解者の一人だったはずで、したがってそういう見方をするのは大いに結構だが、番組の中で、彼の意見がすべてであるかのように扱ってもらったりすると困るというのが、こちら側のファンの意見である。
 そういう点での不満は残るが、番組自体は、泉谷しげるをはじめ、さまざまな関係者にインタビューを敢行しており、『カバーズ』を多角的に捉えようとする意欲が見えて大変好感を持てる。忌野清志郎の盟友であるチャボこと仲井戸麗市までインタビューに登場したのはスゴイの一言。また『カバーズ』の頃に清志郎が当時のレコード会社の担当者に贈ったというデモテープ(『風に吹かれて』などを収録)まで公開されていて内容充実の45分だった。ただしたびたび言うが太田光は出てこなくて良かったとは思う。正面から『カバーズ』と忌野清志郎に対峙する番組にした方がずっとクオリティが高くなっていたんじゃないかと思う。一方でナレーションの西島秀俊は良い味を出していた。
★★★☆

参考:
Wikipedia『COVERS (RCサクセションのアルバム)』
竹林軒出張所『ちょっと憤りを感じてます……』
竹林軒出張所『本日の歌「ヘルプ!」』
竹林軒出張所『本日の歌「軽薄なジャーナリスト」』
竹林軒出張所『こんな歌もあります -- 「原発賛成音頭」』
竹林軒出張所『今日のつぶやき・プラスα』
竹林軒出張所『自衛隊と憲法 日米の攻防』
by chikurinken | 2014-05-07 07:36 | ドキュメンタリー
<< 『EU 租税回避1兆ユーロとの... 『拝啓 色川先生』(ドラマ) >>