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竹林軒出張所

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『サンド・ウォーズ』(ドキュメンタリー)

サンド・ウォーズ 〜広がる砂の略奪〜
(2013年・仏Rappi Productions/La Compagnie des Taxi-Brousse)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

泥棒が砂を盗んでよそで売りさばいてる

『サンド・ウォーズ』(ドキュメンタリー)_b0189364_7254121.jpg 世界中で砂が乱獲(?)されている現状を訴える。このドキュメンタリーで紹介される事例の多くは、建築資材用、埋め立て用としての砂である。
 建築ブームの新興国では、コンクリートの主原料である砂が欠乏しているため、あちこちから砂が不法に採集され、それが結果的に環境破壊をもたらしている。砂なんか世界中にいくらでもありそうなんだが、実はそうでもなく、建築に使える砂は限られた貴重な資源だという。たとえば、建築ラッシュに沸いているアラブ首長国連邦などの場合、国内に砂漠があるのでその砂を使えば良さそうなものだが、砂漠の砂は風化しすぎていて建築資材としては不適格なんだそうで、結果的に他国から輸入せざるを得なくなる。その結果、その国(砂輸出国)で環境破壊が引き起こされるという図式。世界中であまりに砂が不足しているため、中には建築に海砂が使われるケースも多いようだが、海砂を使ったコンクリートでは腐食が異常に早くなるというのは周知の事実である。こういうことを考えると、砂の採取による環境破壊を含め、すべてが後先を考えない行為ばかりで、端からは愚かしい行為にしか見えない。
『サンド・ウォーズ』(ドキュメンタリー)_b0189364_7262462.jpg 砂が埋め立てに使われる事例としては、シンガポールのケースが紹介されている。シンガポールは狭い国土を拡大するために埋め立てを積極的に進めているが、その原料となる砂は実は対岸のインドネシアの海岸から採取されているという。結果的にインドネシア側では海岸が浸食され、利用できる土地がどんどん狭くなる。ということは、これは言ってみれば国土の輸出である。だがインドネシアの住民にはその事実が知らされておらず、こういう取引が違法に行われているという現実がある。
 このドキュメンタリーでは、このような理不尽なことが世界中で行われている現状がレポートされるが、少なくとも砂の違法な取引については今まであまり知らされてこなかったんで、そういう意味でも有用な番組だった。そうそう、ダムの事例(ダムのために砂が海に流れず土壌浸食の原因になる)などについてもきちんと触れられていて、総じて非常に情報量が多いドキュメンタリーであった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実(映画)』
竹林軒出張所『血塗られた携帯電話(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ガスランド(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『岐路に立つタールサンド(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『スエズ運河(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2014-04-18 07:27 | ドキュメンタリー
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