未来の食卓
(2008年・仏)
監督:ジャン=ポール・ジョー
音楽:ガブリエル・ヤレド
出演:(ドキュメンタリー)
健全な食卓は春の陽だまりのよう
学校給食をオーガニック食品に変えたフランス南部のバルジャック村の取り組みを追う。
現代の農産物が大量の農薬や化学物質にまみれているのは、皆さんご承知の通り。こういったものが、生産者だけではなく消費者の健康面や精神面に悪影響を与えているのもすでにあちこちで訴えられている。同時にこのような化学物質は、環境にも悪影響を及ぼしており、地球規模で環境破壊を招いている(土壌劣化や土壌浸食、水質汚染など)。では化学物質を使わないオーガニック(有機)食品にすればいいじゃないか、ということになるんだが、たとえそれが良いとわかっていても実際にはなかなか一歩を踏み出せないのが現実。それは生産者も消費者も同じである。
バルジャック村は、農業を主産業とする村のようだが(おそらくそういうこともあってだろうが)思い切ってオーガニック食品に舵を切ることにした。村議会で、学校給食をオーガニックにするという決定をしたんだそうだ。それに伴い、食材も近隣のオーガニック生産者から購入するという地産地消にシフトした。こうすることで村の農業でもオーガニックを推進したい意向のようだ。
同時に村は、村内の非オーガニック農家とオーガニック農家との会合を設けたり、子供達の保護者や市民を集めた勉強会を開いたりもして、給食を手始めに健全な食と農を地域に広める活動も進めている。現在では他の自治体からも視察が訪れるなど、フランス国内でも注目を集めることになった。
この映画は、このようないきさつを伝えたドキュメンタリーであり、オーガニック食品の店で勉強会に使われる教材みたいな作品ではあるが、押しつけがましさは一切なく、狂信的なことを言う人が登場したりすることもない。画面に登場するバルジャック村の様子、学校の様子は明るくてなんだかほのぼのしている。春の陽だまりのような雰囲気が全編に漂いなかなか心地良いものである。食を取り戻すということはこういうことなんだよという、製作者側の主張なのかも知れない。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『ありあまるごちそう(映画)』竹林軒出張所『フード・インク(映画)』竹林軒出張所『いのちの食べかた(映画)』竹林軒出張所『Love MEATender(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『100マイルチャレンジ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『農よ、自然に帰れ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ハッピーヒル(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『土の文明史(本)』竹林軒出張所『食について思いを馳せる本』