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竹林軒出張所

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『いのちの食べかた』(映画)

いのちの食べかた(2005年・独襖)
監督:ニコラウス・ゲイハルター
撮影:ニコラウス・ゲイハルター
出演:(ドキュメンタリー)

食うためとは言え、殺すんなら
それなりの作法があるだろう


『いのちの食べかた』(映画)_b0189364_7574333.jpg これも、歪んだ食品産業を告発するドキュメンタリー。その後の食品ドキュメンタリー映画に影響を与えたと思われる作で、さまざまな映画賞を受賞している。見るのは今回で2度目。
 登場する食料品は、トマトやキュウリなどの野菜、アーモンド、岩塩の他、牛肉、豚肉、鶏肉など。豚や牛の種付けや牛の搾乳まで映像として現れる。どの食料品も、機械化や大量生産方式で生産されていることが共通しており、そのためにあらゆる場面に違和感がつきまとう。食肉用の家畜の扱いは特にひどく、若鶏は、モノのような扱いで、ここらへんは先日紹介した『ありあまるごちそう』と共通するが、機械で吸引されるわ放り投げられるわで、あげくに吊されて流れ作業で切り刻まれる。豚も機械に押し込まれて殺されるが、機械に押し込まれる前は恐怖で鳴き声をあげているのがわかり、どうも見ていられない。牛も同様で、殺されることを悟って暴れるものも出る。確かに肉を食べる上で誰かが動物を殺さなければならないのはわかるが、もう少し人の道に沿ったやり方はないのかと思ってしまう。もっともこういうことを感じさせるのが製作者の意図なんだろうとは思う(余談だが、こういう残酷な育て方、殺し方をしている人たちが、鯨を殺す人たちを批判するのは筋違いなような気もする)。途中、こういった作業に従事する労働者の昼食風景も頻繁に出るが、正直ちょっと意図がわからない。「動物を殺戮しといてよく食えるな」というメッセージなのか「単に食に関する映像を集めました」というだけなのか、その真意は掴めなかった。
 映画は全編、ナレーションもなく、ただダラダラと映像が流されていく。インパクトのある映像も多いが(特に食肉施設)一方で退屈な映像も割合多い。映画自体は、食について考えるきっかけにはなると思うが、問題点を鋭く突いて声高に告発するというようなものではない(もちろん映像で告発してはいる)。
 邦題の「いのちの食べかた」は、映画の中の食肉の映像を多分に意識したもので、この映画の全体的なイメージとは多少違う印象も受けるが、インパクトのあるタイトルではある。ちなみに原題は『Our Daily Bread』で「毎日のパン」というような意味。
2006年ヨーロッパ映画賞ドキュメンタリー賞他受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『罠師 片桐邦雄・ジビエの極意(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ありあまるごちそう(映画)』
竹林軒出張所『フード・インク(映画)』
竹林軒出張所『Love MEATender(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『フォークス・オーバー・ナイブズ(映画)』
竹林軒出張所『人間は何を食べてきたか(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『100マイルチャレンジ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『食について思いを馳せる本』
竹林軒出張所『農よ、自然に帰れ(ドキュメンタリー)』
竹林軒『福岡正信はこう語った』
竹林軒『ハンバーガーに殺される』

by chikurinken | 2014-04-11 07:51 | 映画
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