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竹林軒出張所

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『キング・コーン』(映画)

b0189364_8214834.jpgキング・コーン(2007年・米)
監督:アーロン・ウールフ
出演:イアン・チーニー、カート・エリス
(ドキュメンタリー)

いびつな食品環境を照射する

 『スーパーサイズ・ミー』と同様の体験型ドキュメンタリー。2人の男がアメリカのアイオワ州で農地を借り切り、そこにトウモロコシを栽培して、そのトウモロコシの行方(消費先と用途)を辿ろうとする。自分の作ったトウモロコシを辿ってトウモロコシがどのように使われるか追求するという試みは残念ながらうまく行っていないが、トウモロコシがどのような方法で栽培されているかや、トウモロコシがどういう分野で消費されているかは、この映画を通じてよくわかるようになっている。
 トウモロコシの栽培は現在アイオワ州全体で広く行われ、多くは遺伝子組み換えコーンで、除草剤や機械がふんだんに使われる大規模経営である。とにかく大量に作ることだけが農業従事者の目標で、当然品質などは二の次。農業従事者たちも自身で作ったコーンを食べることはないと語っている。市場原理だから仕方ないと考える向きもあるかも知れないが、実は市場原理だけではほとんどの農民はやっていけない。利益の多くは国による補助金でまかなわれているといういびつな構図がそこにはある。農民の方も仕事だと割り切っており、こうした現状に対しては結構冷ややかである。
 で、こうして大量に生産されたトウモロコシ(モドキ)だが、その多くは牛の飼料となる。牛はトウモロコシを喜んで食べるらしいが、牛の身体の作りからはトウモロコシは食べ物として適していないらしく、コーンを食べ続ける牛は寿命が5年ほどしかない。まさに食われるために効率よく育てられるということになる。
 トウモロコシの生産量が増えた結果として、現在ではトウモロコシがかなり余っているようで、そのためもあってトウモロコシから甘味料(コーン・シロップ)を作るという産業も発達した。これがほとんどの食品や炭酸飲料で使われているのが現状。ということで、我々(特にアメリカ人)が口にする非常に多くの物がトウモロコシ由来だというのがこの映画の主旨である。そしてその歪んだ食料がひいては糖尿病などの健康疾患の原因になっているというわけ。
 農産品、家畜、農業従事者、食料品がことごとく疎外され、そういう状況は結局まわりまわって消費者に返ってくるわけで、誰が得をしているのかよくわからないのが現在のアメリカの現状である(ごく一部の人間だけが儲かってるんだろう)。おそらく当事者達は、周りが少しずつ変化しているんでその異常さに気が付かないんだが、部外者が見るとどう見ても異常な風景である。そういうところがうまく照射されていてなかなか面白かった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『フード・インク(映画)』
竹林軒出張所『いのちの食べかた(映画)』
竹林軒出張所『Love MEATender(ラブ ミートエンダー)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『モンサントの世界戦略(ドキュメンタリー)』
竹林軒『ファストフード・イコール・ファットフード』
竹林軒『ハンバーガーに殺される 食肉処理事情とアルツハイマー病の大流行』
竹林軒『デブの帝国 いかにしてアメリカは肥満大国となったのか』
竹林軒出張所『食について思いを馳せる本』
by chikurinken | 2014-04-09 08:21 | 映画
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