再会(2001年・中部日本放送)
演出:山本恵三
脚本:山田太一
出演:長塚京三、倍賞美津子、石田ゆり子、岡田義徳
山田ドラマ最後期の輝き これも
『旅の途中で』同様、中部日本放送製作の山田ドラマ。そのシリーズの第一弾がこの作品で、こちらもやはり1時間10分の中編ドラマである。
家族を捨てて男の元に走った女性が、再び家族の住む町に戻り、元の夫、子供達と再会するというストーリー。もちろんそこには当然想像されるいろいろなドラマが発生するんだが、かと言って突飛なものはなく、ストーリーの流れが非常に自然である。当然起こりうるべき発言があり、当然起こりうるべき反発や感情がわき起こる。そこには経験者の話を基にしたのかと思うほど不自然さがない。こういう平凡な家族模様を描かせたら山田太一の右に出るものはないと感じさせるほどだ。セリフも、後の山田ドラマみたいにとってつけたようなものはなく、自然な会話の中に独特のおかしみを醸し出したりする一方で、妙に心に残るようなインパクトのあるセリフがさりげなく出てきたりする。山田太一の真骨頂と言える。
また主演の倍賞美津子が、ちょっと突き抜けた(天然の)楽天的な中年女性を見事に演じており出色である。倍賞美津子は
『時は立ちどまらない』にも出ていたが、印象がまったく違う。長塚京三ももちろん好演だし、石田ゆり子と岡田義徳もそれぞれ存在感がある。最近の山田ドラマとどこが違うのかよくわからないんだがとにかく何もかも全然次元が違うと感じる。そういうわけで、1970年代からこの頃までが山田太一の「傑作の森」と言えるんではないかと今になって思う。
平成14年日本民間放送連盟賞、平成13年度文化庁芸術祭優秀賞受賞
★★★★参考:
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など(ドラマ)』竹林軒出張所『旅の途中で(ドラマ)』竹林軒出張所『時は立ちどまらない(ドラマ)』竹林軒出張所『チロルの挽歌(ドラマ)』竹林軒出張所『いちばん綺麗なとき(ドラマ)』竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『山田太一のドラマ、プラス10』