『旅の途中で』（ドラマ）

旅の途中で（2002年・中部日本放送）
演出：山本恵三
脚本：山田太一
出演：竹下景子、奥田瑛二、山本學、金井勇太、森絵梨佳、金久美子

豊橋が舞台の山田ドラマ

　山田太一作の1時間10分の中編ドラマ。中部日本放送（CBC）製作と言うことで舞台は愛知県の豊橋である。全編名古屋弁というか豊橋弁が出てきて、しかも愛知県出身の主演の2人（竹下景子と奥田瑛二）がこれを駆使するということで方言が実に自然。ただ、少々エレガンスに欠ける印象もあるが、その辺は製作者側の意図かも知れない。結果的に市井の人々の姿がよく描かれることになっている。
　ストーリーは、理髪店を営む平凡な夫婦の前にある日突然「謎の男」が現れて妙な要求をするという、山田太一作の中編ドラマにありがちな展開である。ただそこに介護やなんかが関わってくるあたりが2002年という時代を反映していると言える。話はよどみなく展開しなかなか面白いんだが、しかし見終わった後よくよく考えると、これはちょっとないなという話である。ちょっと「無理から」の話だが、それなりに見られる状態で提示してくるのは、脚本家の技量なんだろう。
　この頃、CBCは『再会』や『いくつかの夜』など中編山田作品を何本か製作していて、しかもまたそれがことごとく芸術祭参加作品なんだが、当時CBCのドラマ部門でそういう方針が打ち立てられていたのだろうか。詳細についてはよくわからないが、どれもユニークな作品ばかりである。

2003年日本民間放送連盟賞優秀賞受賞

★★★☆

参考：
竹林軒出張所『「早春スケッチブック」、「夕暮れて」など（ドラマ）』
竹林軒出張所『再会（ドラマ）』
竹林軒出張所『いくつかの夜（ドラマ）』
竹林軒出張所『いちばん綺麗なとき（ドラマ）』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、プラス10』