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竹林軒出張所

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『偏屈のすすめ。』(本)

偏屈のすすめ。
自分を信じ切ることで唯一無二のものが生まれる。

フランソワ–ポール・ジュルヌ著、高木教雄構成
幻冬舎

偏屈な時計師の偏屈な哲学

『偏屈のすすめ。』(本)_b0189364_748090.jpg 天才時計師と呼ばれている(らしい)ジュルヌ氏が、自らのもの作りについて書いた本。
 なんでもこのジュルヌ氏、トゥールビヨンという時計のカラクリ(ムーブメント)を自作したことで名前が出るようになったらしく、その後、トゥールビヨンにルモントワールという機構を組み込んだことで一躍その名を知られることになったらしい。なにぶん時計にはまったく疎いので、トゥールビヨンもルモントワールもどういうものかよくわからないんだが、とてもすごいことらしい。
 なんでもこのジュルヌ氏、少年時代は大変な落ちこぼれだったという。いろいろなことを強制的にやらされるのが嫌だったんだそうだ。その後、彼の将来を憂いた母親が、彼を時計学校に入れたところから時計師としてのキャリアが始まる。卒業後は叔父の置き時計工房に就職するが、(店の専門外の)懐中時計を(本人の希望により)そこで作り出す。入ったばかりの新人に新しい分野の事業をやらせるのは当然普通のことじゃないが、だがしかしこれを機に、ジュルヌ氏は才能を発揮し出すのだった。
 このジュルヌ氏のスタイルは、他人の作った機構をそのままコピーするのではなく、自ら分析して試行錯誤しながら、自分のオリジナルの方法で再現するというもので、そういう点でも異色らしい。場合によっては歴史の中で途絶えていた技術を発掘して再現したりすることもやっているようで、ここらあたりは日本の他分野の名工、西岡常一(竹林軒出張所『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言(映画)』参照)や立原位貫(竹林軒出張所『一刀一絵 江戸の色彩を現代に甦らせた男(本)』参照)らにも相通ずるところがある。
 僕にとってよく知らない分野ではあるが、偏屈な職人魂というのは古今東西共通なんだなというのはよくわかる。もっとも彼の作る時計は(高級すぎて)僕にはおそらく一生縁がないものだと思うが。
★★★

参考:
竹林軒出張所『独立時計師たちの小宇宙(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『万年時計(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言(映画)』
竹林軒出張所『一刀一絵 江戸の色彩を現代に甦らせた男(本)』

by chikurinken | 2014-02-28 07:48 |
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