ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『若きビジネスマンと被災農家の1050日』(ドキュメンタリー)

農の夢よ、よみがえれ
若きビジネスマンと被災農家の1050日
(2014年・NHK)
NHK-Eテレ ETV特集

その後のマイファーム亘理

『若きビジネスマンと被災農家の1050日』(ドキュメンタリー)_b0189364_8224828.jpg 2012年に制作された『被災農家を救え 若きビジネスマンが挑んだ農業再生550日』の続編。その後のマイファーム亘理(わたり)組合の500日を追う。
 前作では、マイファームが宮城県亘理町の被災農家に手を差しのべ、なんとかトマトの出荷にこぎつけるまでを追っていたが、今回はその翌年の様子である。マイファームからは西辻一真氏だけでなく、その片腕の小西良明氏もやって来て、利益が出るように業務を改善しようとする。実のところトマトは生産できて一応の進歩は見たが、結果的には数百万円の赤字を生み出すことになっている。農業再生はスタートしたが、まだ軌道に乗っているとは決して言えない。そこで農業経営のスペシャリストの小西氏の登場ということになる。
 小西氏が示した新しいプランは、生産できたトマトを商品化して付加価値をつけることで売上を増やすというもので、いわゆる「6次産業化」である。これがうまくいけば少なくとも赤字を減らして事業として継続できるようになるという目論見である。だがそうは問屋が卸さないのが、自然を相手にする農業の難しさ。夏の長雨のせいでトマトの収穫は激減。組合の中でも組合員同士で不穏な空気が流れるなど、さまざまな問題に直面する。あげくに小西氏が倒れて、事業にコミットできなくなる。
 ただこのまま座して死を待つわけにもいかず、次なる策として、以前組合員の1人が口にした「へそ大根」のプラン(大根を生産し、取れた大根を干すことで「へそ大根」として商品化するというもの)に取り組むことになる。そのため、本来であれば休耕する冬期にも同じ畑で大根を作る。そして大根は生産できた。さあこれから商品化……という段階で今回のドキュメンタリーは終了する。
 完全な復興まではまだまだ道のりは長いが、彼らは彼らなりの方法で苦難を乗り越えながら少しずつ前進している。そのことが見る側にも伝わってくる。前作ほどのドラマチックな展開はなかったが、それでもあちらこちらに起伏がもられていて、前作同様、こちらも非常に面白いドキュメンタリーに仕上がっていた。盛り上がりがあって演出のうまさが光る、そういったドキュメンタリーだった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『若きビジネスマンが挑んだ農業再生550日(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『マイファーム 荒地からの挑戦(本)』
竹林軒出張所『その農地、私が買います(本)』

by chikurinken | 2014-02-18 08:23 | ドキュメンタリー
<< 『スターリンの亡霊』(ドキュメ... 『若きビジネスマンが挑んだ農業... >>