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竹林軒出張所

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『日本の悲劇』(映画)

b0189364_8233469.jpg日本の悲劇(1953年・松竹)
監督:木下恵介
脚本:木下恵介
音楽:木下忠司
出演:望月優子、桂木洋子、田浦正巳、上原謙、高杉早苗、高橋貞二、佐田啓二

日本版ネオレアリズモ

 終戦から8年後の1953年に作られた木下恵介の映画。戦後の混乱が描かれており、混乱の時代によって押しつぶされる人々がストーリーの中核になる。マクロレベルで見れば「戦後の混乱」で片付けられてしまうが、ミクロレベルで見ればあちこちに不幸が転がっている。そしてそれを拾って描きだしたのがこの映画ということになる。
 この映画も25年ほど前に京都の日本映画鑑賞会で見たんだが、見た後しばらく絶句してしまったくらい衝撃的で暗い映画である。公開当時、松竹の映画人がこの映画をことごとく絶賛したという伝説もあるが、それも良くわかる。社会の歪みの犠牲になる市井の人々を描くという内容は、当時のイタリアのネオレアリズモ映画を彷彿とさせる内容で、日本の映画でもこういうリアリスティックな描き方ができたんだなということに感心させられる。同時に戦後のイタリアと同じような状況が日本にもあったということがわかる。こういう映画を作り上げた木下恵介もただものではない。そう言えば同じ木下恵介の『太陽とバラ』もネオリアリズモ風で、同じような映画だったような記憶があるがあまり確かではない。なにぶん見たのが大分前なんで。
 登場人物については、どの人物の行動にもそれなりの動機付けがあり、したがってあいつが悪い、こいつが良いみたいな決めつけができない。そのあたりも脚本レベルでよくできていると思う。正直言って少し(登場人物が)「イタイ」と感じるシーンが多く、正視に耐えない部分も多い。なんだかはらわたをえぐられるような心地もする。劇場で2時間近くこの映画を見ると非常に疲れるが、それでも秀作であることは間違いない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『カルメン故郷に帰る(映画)』
竹林軒出張所『女の園(映画)』
竹林軒出張所『藍川由美「喜びも悲しみも幾歳月 〜木下忠司作品集」(CD)』
by chikurinken | 2014-02-15 08:25 | 映画
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