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竹林軒出張所

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『炎上』(映画)

b0189364_811988.jpg炎上(1958年・大映)
監督:市川崑
原作:三島由紀夫
脚本:和田夏十、長谷部慶治
撮影:宮川一夫
美術:西岡善信
出演:市川雷蔵、仲代達矢、中村鴈治郎、北林谷栄、信欣三、浜村純、浦路洋子、中村玉緒、新珠三千代、舟木洋一、香川良介

オールスター・スタッフが
最高の素材を使って作った映画


 三島由紀夫の『金閣寺』が原作ということになっているが、『金閣寺』とは大分違う。以前『金閣寺』を読んだときは何が何やらさっぱりわからなかったが、この映画ではさっぱりまとめられていて、主人公の心の動きが割合わかりやすい。金閣寺放火事件の解釈としては、こちらの方が適切な気がする。
 冒頭に「登場する人物及びその背景はすべて完全に架空のものである」と断りが出ることからわかるように、実在の名前はたとえば鹿苑寺→双円寺、金閣→驟閣などのように変えられている。美術は、二層の驟閣を再現するなど大変凝りまくっていて、しかもそれを実際に燃やしてしまうなど、もう奇跡的である。ロケも適当に交えながら、さながら鹿苑寺の境内のような場面を見事に再現している(おそらく大覚寺とか天竜寺とかでロケをやったんじゃないかと推測する)。いずれにしても、この美術からだけでも当時の大映の映画作りのすごさがうかがわれる。
 キャストも見事で、市川雷蔵、仲代達矢、中村鴈治郎、北林谷栄らが好演している。この映画は25年ほど前に初めて見たんだが、そのときは市川雷蔵も(若い頃の)仲代達矢も見たことがなかったので、彼らが本当に障害を抱えた人だと思い込んだほどである。市川雷蔵は、その後わかったが実のところ二枚目スターだったわけで、当時こういう役は異色だったに違いない。鬱屈した若者が見事に表現されていて、見ていて正視に耐えないほどだった。仲代達矢も同様で強烈なエネルギーを発散している。市川崑の演出も手堅く、特に実景から回想に飛ばすカットの重ね方など今見ても斬新である。
 キャストもスタッフも今見ると超豪華で、これだけのメンバーを連ねてそれなりの資金を投入するとこれだけの傑作ができるという良い見本になっている。当時の日本映画の質の高さを垣間見ることができる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『五番町夕霧楼 (63年版)(映画)』
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『吾輩は猫である(映画)』
竹林軒出張所『おとうと(映画)』
竹林軒出張所『太平洋ひとりぼっち(映画)』
竹林軒出張所『ぼんち(映画)』
竹林軒出張所『破戒(映画)』

by chikurinken | 2014-02-14 08:11 | 映画
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