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竹林軒出張所

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『統合失調症がやってきた』(本)

統合失調症がやってきた
ハウス加賀谷、松本キック著
イースト・プレス

失調症の芸人の手記

『統合失調症がやってきた』(本)_b0189364_17504488.jpg 松本ハウスという漫才コンビがあって、そのうちの一人、ハウス加賀谷って人が統合失調症を煩っていたという。僕自身、「松本ハウス」という人たちをまったく知らなかったので、意外だとか驚きだとかそういった感情はまったくない。ただ単に統合失調症の症状や、統合失調症の患者がお笑いをやるということに興味があって、この本を読んでみたのだった。
 この松本ハウスというコンビ、なんでも1990年代、『ボキャブラ天国』とか『電波少年』とかに頻繁に出ていたらしいが、その片割れのハウス加賀谷が、中学生時代から統合失調症の症状があったが、その後お笑い芸人になることを志し、やがて芸人としてブレイクする。だが、多忙を極める日々が続くうちに彼の症状が悪化し、芸能界から引退して入院生活に入る。10年間療養に努めた後、2009年にコンビを復活して現在に至るが、そのあたりのいきさつを加賀谷自身が語ったのがこの本(なお文章化したのは相方の松本キックの方だという)。途中、松本キックも当時の様子などを相方の視点から書き綴っていて、周囲から見た統合失調症患者、加賀谷の様子も垣間見ることができる。
 加賀谷の筆(実際には松本の筆)は非常に素直で読みやすいが、内容についても、特に彼を悩ませてきた症状(幻覚や妄想)が非常に興味深い。松本キックが寄せている手記も非常に面白い。特に、終わりの方に「漫才風のインタビュー形式」で「アルバイト物語」という項が挟まれているが、ここでの2人の(架空の?)やりとりが漫才的で非常に面白かった。この本による限り、松本キックが非常に良い人に描かれており、加賀谷は良い相棒を見つけたという印象を受ける。ただし実際に書いているのは松本だということなので、本当のところはわからない。割り引いて考えるのがよかろう。
 統合失調症、かつては精神分裂病と呼ばれ不治の病とされていたが、この本を読む限り、現在では薬で症状がかなり緩和されるようで、通常の生活も可能のようだ。長く付き合っていかなければならないのは相変わらずのようだが、社会から完全にスピンアウトしなくてもやっていけるようになっているように思える。もちろんきちんと対応しなければ、症状が激烈であるのは昔と変わりないが。そのあたりもこの手記からうかがうことができる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『人間仮免中(本)』
竹林軒出張所『今日もテレビは私の噂話ばかりだし……(本)』

by chikurinken | 2014-02-05 17:50 |
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