忘れられた皇軍(1963年・日本テレビ)
日本テレビ・ノンフィクション劇場
監督:大島渚
語り手:小松方正
小松方正の語りがまた強烈 先日、『NNNドキュメント』で『反骨のドキュメンタリスト 大島渚「忘れられた皇軍」という衝撃』というドキュメンタリーが放送された。かつて大島渚が作ったドキュメンタリー『忘れられた皇軍』をメインに据えた企画で、当時の大島を知る人々のインタビューや撮影風景などを絡めて1時間枠の番組にしたものである。当然『忘れられた皇軍』も全編放送された。なんでも制作されてから50年間放送されていないらしく、今回半世紀ぶりに日の目を見ることになったそうな(朝日新聞DIGITAL「大島渚監督、幻の30分作品 今夜、半世紀ぶり再放送」より)。
内容は、朝鮮生まれでありながら先の戦争にかり出され、あげくに手、足、目などを失った傷痍軍人の話である。戦後、当然のことながら傷痍軍人が大量に発生し、町でも傷痍軍人会などが活動をしていたという話を聞いたことがある。ただし、一般の傷痍軍人には、傷病恩給や軍人恩給が支給されていたが、このドキュメンタリーに登場する軍人については、朝鮮生まれであるという理由で恩給が出ていない。韓国から保証してもらえというのが日本政府の態度らしい。彼らは、その不当性を訴え通常の軍人恩給を求めるため、閣僚に会いに集まってきた。その模様をカメラで捉え、この現状を改めるべきだと強く訴えたのがこのドキュメンタリー。「日本人よ、これでいいのだろうか?」というナレーションが最後に繰り返されるなど、非常にストレートな内容である。また、身体障害者になった元軍人たちの姿もカメラでしっかり捉えられているため、そのインパクトも相当なものだ。
ただそういった強烈なメッセージ性やインパクトを別にすれば、割に素朴なドキュメンタリーで、ドキュメンタリーとして考えるならば平凡である。大島渚作品は、劇映画にも通じるが、メッセージ性の強さを感じることはあるが、割合雑な印象を受ける。このドキュメンタリーも例外ではなく、身体障害を前面に出した映像に結局終始してしまっているような気がする。そういう点でも少々物足りなかった。
なお、この映像は
Dailymotionというサイトで見ることができる。
第1回ギャラクシー賞受賞
★★★☆参考:
Dailymotion『反骨のドキュメンタリスト 大島渚「忘れられた皇軍」という衝撃』朝日新聞「大島渚監督、幻の30分作品 今夜、半世紀ぶり再放送」竹林軒出張所『反骨の砦(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『日本人は何をめざしてきたのか (6)(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『本日ただいま誕生(映画)』