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竹林軒出張所

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『フランス 原子力政策の軌跡』(ドキュメンタリー)

フランス 原子力政策の軌跡
(2013年・仏Morgane Production/Kami Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

『フランス 原子力政策の軌跡』(ドキュメンタリー)_b0189364_813695.jpgフランスの原子力事情

 福島第一原発の事故をうけて作られたフランス製のドキュメンタリーで、フランスの原子力事情を紹介する。
 2011年の福島第一原発事故をきっかけに、世界中の国で原発の見直しが行われ、ドイツやスイス、イタリアのように原発廃止に向けて舵を切った国がある一方で、いまだに原発政策を強行に進めようとする国もある。その代表格がフランスで、フランスが原子力大国であることを考えると無理もないと言えるかも知れない。福島第一原発の汚染水処理にもフランスのアレバ社の技術が採用されたと聞く(全然役に立っていないという話もあるが)。
 実際フランスには60基もの原発があり、高速増殖炉の開発もかなり長いこと進められていた(スーパーフェニックス、今は廃炉)。総電力の70%以上が原子力によるもので、しかも電力の輸出も行っている。原子力に取り組んだのも早く、自前の原子炉もある。アメリカと並ぶ原子力先進国であるのは間違いない。
 元々フランスの原子力への取り組みは、第二次大戦後の核兵器開発に始まったもので、その後第一次オイルショックの際に原子力発電への傾倒が進んでいった。当初は日本と同様、原子力は未来のエネルギーという見方がされていて、負の部分があまり明らかでなかったこともあるが、同時にフランスはキュリー夫妻を輩出した国であり、原子力技術に対してひとかたならぬ思い入れがあることも大きく作用しているんだろう。実際、原子力テクノクラートの力が大きく、政権の中枢部に深く入り込んでいるというのだ。そのために政府レベルで、反・原子力に舵を切ることができないらしい。
 スリーマイル原発やチェルノブイリ原発の事故を経験してからは原子力に対して懐疑的な勢力も増えているが、それでも状況は変わらず。原発の増設まで行われている。現在稼働中の原発が約60基で、アメリカ、旧ソ連に次いで第3位、日本の54基をしのぐということで、統計的に素直に考えると、次に大事故が起こるのはフランスが有力ということになる。日本も、今は多少変わったとはいえ、この間の事故以前はフランスと同様の状況だったわけで、やっぱり愚かしい文明人は自らが大失敗を経験しないと気付かないものなのか。だがヨーロッパ大陸で大事故が起こると、その影響は福島の比ではあるまい。
 こういうドキュメンタリーが、フランス国内でもたびたび作られていることを考えると、世論は原子力政策に対して懐疑的であることがわかるが、いい加減舵を切らないと取り返しがつかなくなるよと老婆心ながら言いたくなる。ま、日本もまったく同じだが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『終わらない悪夢 前編、後編(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『原子力大国 アメリカ(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2014-01-28 08:14 | ドキュメンタリー
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