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竹林軒出張所

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『スモール・アクト』(ドキュメンタリー)

スモール・アクト 〜小さな善意が生んだもの〜
(2010年・米Harambee Media)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

小さな善意が報われた稀少なケース

『スモール・アクト』(ドキュメンタリー)_b0189364_891178.jpg 現代ニッポン、善意の寄付はとりたてて珍しいものではなく、街頭での募金活動などもよく目にする。だが、実際には寄付した金がどこに流れているかもわからないまま終わってしまうのが実情である。もちろんそれがターゲットとなる場所に届いていれば不服はないが、本当にちゃんと届いているのか、まさか途中で着服している人々がいるんじゃないかなどと考えると、寄付をしようという気持ちもあまり起こらない。
 このドキュメンタリーで取り上げられているケースは、かつてケニアに住んでいた貧しい1人の子どもが、1人のスウェーデン人女性に(ほぼ匿名に近い状態で)毎月15ドル程度の支援を受け、その結果、ケニアの大学を卒業し、その後ハーバード大学を経由して国連で働くようになったというもの。後に、支援を受け続けたこの元少年(クリス・ムブル)は、唯一わかっていた名前(ヒルダ・バック)を頼りにこの女性を探し出して、今日の自分があるのはあなたのおかげですと感謝の意を述べたのだった。しかもこのクリス、現在では、貧しいケニア人の子どもたちの進学を助けるための奨学金を自ら提供していて、それにヒルダ・バック基金という名前をつけているというのだから立派である。
 たしかにこのヒルダ・バックの行いは立派だが、それにもまして、いまだに恩義を感じ次の世代にその善意をつないでいこうとするクリスの思いがまことに気持ち良い。こういう風に思いが伝わるんなら寄付も良いよなと思う。でもやっぱりこういうケースは少ないんだろうとも思う。支援によって1人でも貧しい子どもが助かればまだ良いんだが、それすらもわからないまま終わってしまうのが普通である。もっともそういう条件でも支援するというのが本当は大人の態度というものなんだろうが、どこか釈然としない気持ちも残る。
 そういう意味でもこのクリスの行動はすばらしい。このドキュメンタリーを見た多くの人が、貧しさにあえいでいる子どもたちを助けたいと感じたんじゃないかと思う。間違いない。
★★★☆
by chikurinken | 2014-01-20 08:10 | ドキュメンタリー
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