HIT SONG MAKERS 栄光のJ-POP伝説
いずみたく、浜口庫之助
(2013年・BSフジ、イースト)
BSフジ
流行歌黄金時代を回顧する 60〜70年代の歌謡界を彩った音楽家を特集する『HIT SONG MAKERS』シリーズの第2シリーズ。
第1シリーズは2005年に製作・放送され、筒美京平や宮川泰を特集していた(その後DVD化された)。この番組自体、非常によくまとまっていて、日本民間放送連盟賞なんかも受賞したらしいが、その第2シリーズが2013年に製作され、中村八大、いずみたく、浜口庫之助、井上大輔が取り上げられた。今回僕が見たのは傑作選ということでいずみたく、浜口庫之助、井上大輔の3人の回が放送されたもの。中村八大にも非常に興味はあるが、放送されないんだから仕方ない。今回見たのはいずみたく、浜口庫之助の回で、井上大輔の回はパス。
まず、いずみたくであるが、1960年代生まれの我々にはお馴染みの名前で、なんと言ってもピンキーとキラーズや佐良直美らを育てて大ヒットを飛ばしたことで知られる御仁。僕自身大人になるまで彼の曲にはあまり関心がなかったが、昔の歌謡曲などをちょくちょく耳にしているうちにその楽曲の新鮮さにあらためて気が付いたという次第。で、いろいろ調べてみると、あれもいずみたく、これもいずみたくといった具合で、その守備範囲が非常に広い(しかもことごとく質が高い)ことに気が付いた。ざっと見ただけでも流行歌以外にアニメソング、ドラマのテーマ曲、CMソングなど非常に多彩である。中でも、日本のスタンダードを作るという意気込みで始めた「日本のうた」シリーズは、すでに流行歌の域を超え、今やスタンダードになっていると言ってもよい(たとえば「女ひとり」や「いい湯だな」)。
そのいずみたくの生い立ち、音楽業界に入ったいきさつから始め、多彩な楽曲や交友関係を紹介していくというのがこのドキュメンタリー。中でもその広い交友関係には驚く。音楽界の人脈は当然だとしても、その他に野坂昭如、永六輔、やなせたかしらとも親しく付き合っていたと言う(彼らとは音楽作りでも共作している)。しかもこのいずみたく、音楽作りはすべて独学だったというから二度ビックリ。いってみればアマチュア上がりなわけで、あの独創的なメロディーは、たしかにプロっぽくなく、それが新鮮さにつながっているのだなとあらためて納得する。いろいろ勉強になった。なお、いずみたくの代表作は、上記楽曲の他に「見上げてごらん夜の星を」、「夜明けのスキャット」、「恋の季節」、「夜明けのうた」、「肝っ玉かあさん」、「手のひらを太陽に」、「ゲゲゲの鬼太郎」、「花のア太郎」(アニメ『もーれつア太郎』テーマ曲、メロディが独創的で面白い)など。由紀さおりのデビュー・アルバム
『夜明けのスキャット』はほとんどの楽曲がいずみたく作である。
浜口庫之助の回もいずみたく同様に、生い立ちから始まり時系列で浜口の楽曲が紹介されていく。バンド・メンバーとしてのキャリアの後(紅白歌合戦の出場経験もある)、ソングライターに転身し、数々のCM曲、歌謡曲を手がけ、ヒットを飛ばしていく。「黄色いサクランボ」、「星のフラメンコ」、「バラが咲いた」、「空に太陽がある限り」などが代表曲だが、作詞、作曲の両方をこなし、ときには自分でも歌っていたということでシンガーソングライターの走りと言えるかも知れない。晩年は癌による闘病生活が長く続いて、若い時分のようになかなか活動できなかったが、島倉千代子に「人生いろいろ」を提供し最後のヒットを飛ばす(そしてその数年後に他界)。
ハマクラ先生の場合、彼の歌謡曲作品についての印象は個人的にはあまりないが、CM曲に面白いものが多く、そちらの方で興味が湧く。ちなみに代表的なCM曲は「小さな瞳」(ロッテ・チョコレートのテーマ曲)、「私のカローラ」(ボサノヴァ調の軽快な曲)、「ヤクルト・ジョア」(小柳ルミ子が歌唱)など。ハマクラ先生のCM曲については、
『浜口庫之助 CM大全』などのCDでも接することができる。なお、番組内では、小野リサが、ハマクラ先生の代表曲として「私のカローラ」と「みんな夢の中」をライブで歌っていた。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『夜明けのスキャット(CD)』竹林軒出張所『明日へのスキャット(本)』竹林軒出張所『CM曲のCD』竹林軒出張所『拝啓天皇陛下様(映画)』竹林軒出張所『筒美京平からの贈りもの(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『アイドル誕生 輝け昭和歌謡(ドラマ)』