和食 千年の味のミステリー(2013年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル
ウマミの功労者は微生物だって 先頃世界文化遺産に登録された「和食」の秘密を扱ったドキュメンタリー。国際共同制作(フランスの製作局との共同製作)ということで、映像が非常に美しく一目でそれとわかる演出である。
番組では、京都の老舗醤油醸造蔵、清酒醸造蔵、麹販売業者に密着し、それぞれの仕事を通じて麹菌の秘密に迫る。麹菌の発酵過程をスーパースピードで映像化するだけでなく、麹菌を利用するためにそれぞれの蔵で行われている奮闘や、麹販売業者の麹への関わり方なども映像化される。やがて麹が日本独特のものであり、おそらく日本人によって野生株から選抜された特異株であって「家畜化」された生物ではないかという驚くべき説が提示される。
また、醤油や酒に麹菌が関わっているだけでなく、日本料理に代表されるあらゆる「うま味」(鰹節や干し昆布)にも微生物が関わっていることが紹介される。これも面白い見方で、目からウロコである。ただし、醤油のケースにも言えるが、麹以外のどのような微生物が発酵に関与しているか具体的に紹介されていなかったのが残念で、もう一歩突っ込んでほしかったなと思う。また映像に一部こざかしさを感じるような箇所があったのもマイナス点である。
全体的に、美しい映像を通じて、新しい見方を次々と提示していくというなかなか興味深い番組で、非常にグレードが高いと思う。伝統的な醸造法や麹菌マジックに関心がある人にはたまらないドキュメンタリーになっていた。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『精進料理大全(ドキュメンタリー)』