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竹林軒出張所

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『まんがで読破 孫子の兵法』(本)

まんがで読破 孫子の兵法
バラエティ・アートワークス作画
イースト・プレス

全然『孫子』じゃねーし

『まんがで読破 孫子の兵法』(本)_b0189364_8252787.jpg 『孫子の兵法』というタイトルになっていて『孫子』のマンガ化であるように装っているが、まったく『孫子』とは違う。『孫子』を(おそらく)モチーフにして、孫无(そんぶ:著者とされる孫武をもじったものだろう)という名前の軍師を主役に据えた物語になっている。この孫无が仕えている国が岑(しん)という(おそらく)架空の国で(おそらく呉がモデル)、敵になる国々もそれぞれ(おそらく)架空の国なんでわかりにくいったらない。この岑が、他国や夷狄と戦いこれを破っていくというストーリーで、その過程で孫子の兵法のエッセンスが盛り込まれるといった趣向。このあたり「おそらく」を連発しているのは、僕が原著についてよく知らないからで、そういう人間こそが読みたいと思う類の本なのに、原著の内容が窺えないというのは一体どういう了見なのか、作り手に聞きたいところだ。
 ストーリーはそこそこ面白くできているが、服装や背景も(おそらく)デタラメで、そういう意味でもまったく参考にならない。あくまで『孫子』入門書という位置付けのマンガで、決してそれ以上ではない。『孫子の兵法』というタイトルは羊頭狗肉も甚だしい。そういう点では『純粋理性批判』や『般若心経』をも超える。ただ繰り返すが、ストーリーとしてはそこそこ面白くできているんだな。だから読んでいてそれなりに楽しめる。その辺が少し悩ましい点である。
★★☆

追記:
 『まんがで読破』シリーズは、これまで都合8冊読んだことになるが、今回で終わりにしようと思う。正直言って「もういいや」という気分である。
 割に読めたのが『旧約聖書』、『エミール』、『神曲』で、『純粋理性批判』、『般若心経』、『孫子の兵法』は看板に偽りありでまるで話にならない。シリーズとしての狙いは面白いが、質的にはちょっと物足りない。タイトルは豊富で多岐に渡っているが、量さえ揃えば良いっちゅーもんじゃないしね。

参考:
竹林軒出張所『まんがで読破 ルソー・作 エミール(本)』
竹林軒出張所『まんがで読破 カント作・純粋理性批判(本)』
竹林軒出張所『まんがで読破 旧約聖書(本)』
竹林軒出張所『まんがで読破 クラウゼヴィッツ・作 戦争論(本)』
竹林軒出張所『まんがで読破 般若心経(本)』
竹林軒出張所『まんがで読破 ダンテ・作 神曲(本)』
竹林軒出張所『まんがで読破 施耐庵・作 水滸伝(本)』
by chikurinken | 2014-01-14 08:27 |
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