タクシー・サンバ(1981年・NHK)
第1話 夜の少年
第2話 愛のかたち
第3話 路上の荒野
演出:村上佑二(1)(3)、音成正人(2)
脚本:山田太一
出演:緒形拳、坂上二郎、花沢徳衛、岡本信人、毒蝮三太夫、佐野浅夫、辰巳柳太郎、愛川欽也(1)、松田洋治(1)、大原麗子(2)、榊原郁恵(2)、役所広司(2)、紺野美沙子(3)、隆大介(3)
サービス精神満点、ネタの宝庫! タクシー・ドライバーを主役に据え、彼らの視点から同時代の社会を照射するという異色のドラマ。全3話構成で、それぞれ独立した話になっている。同じ脚本家が同じ頃、同じNHKで書いた『男たちの旅路』と同じような構成である。特に、第1話は、家庭で疎外されている父親の仕事ぶりを子どもに見せるという「昼間のパパ」(忌野清志郎作『パパの歌』--1991年--より)の話で、おそらく当時としてはかなり新しい主張だったんではないかと思う。またタクシー・ドライバーを主役に使うというのも、梁石日の『タクシー狂騒曲』が同じ年に出ていることから考えると、相当新しい試みで、脚本家の面目躍如というものである。
第2話は、話自体は一般的な恋愛ドラマにありがちなストーリーだが、今で言うところの「共依存」がモチーフで、そこに主人公および同僚の半生が絡み合うというなかなか重厚な展開になっており、これも脚本家の豪腕が光る逸品である。第3話は、「ひきこもり」に通じるような問題を扱っており、同時に主人公の成長の話になっている。プロットをいくつも絡めてうまくまとめ上げた快作で、気持ちのいい話である。よくよく考えてみると、今これだけのドラマを書ける人はいないよなーと思う。
どの回もゲスト出演者が出てドラマに彩りを添える。第1話の松田洋治はこの後同じ脚本家の
『深夜にようこそ』、第2話の大原麗子は
『チロルの挽歌』、第3話の紺野美沙子は『真夜中の匂い』で主役級で起用されるし、緒形拳や岡本信人も山田ドラマの常連ということを考えると、あて書きであることが窺える(もっとも山田太一は大体あて書きの人らしいが)。新国劇の辰巳柳太郎は異色な役回りだが、非常に好演。緒形拳との絡みも冴え渡る。ちなみに辰巳柳太郎は緒形拳の師匠で、緒形拳は辰巳の元付き人だったらしい。
プラハ国際テレビ祭テレビドラマ部門カメラワーク賞受賞
★★★☆参考:
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『風になれ鳥になれ (1)〜(3)(ドラマ)』