ヴェルディ 歌劇『椿姫』
(1992年・フェニーチェ歌劇場ライブ)
出演:エディタ・グルベローヴァ(ヴィオレッタ)、ニール・シコフ(アルフレード)、ジョルジョ・ザンカナーロ(ジョルジョ)、マリアナ・ペンチェワ、アントネルラ・トレヴィザン
カルロ・リッツィ指揮
トスカーナ・バレエ団
フェニーチェ歌劇場管弦楽団&合唱団
1992年12月、ヴェネツィア、フェニーチェ歌劇場におけるライブ収録
『椿姫』初演時の再現?
病人に見えないヴィオレッタ ヴェルディのオペラは湿っぽいのでそもそもがあまり好きじゃないんだが、中でもこの『椿姫』の湿っぽさは格別。『椿姫』については、過去、デュマ・フィスの原作戯曲を読んだ上、このオペラ自体も見たことがあるような記憶がうっすらあるんだが、内容はあまり憶えていない。どっちみちあまり好きな作品でないのは確か。それでもまあ、今の時代まで残っているんで何か良いところがあるんだろうと思い、今回DVDを借りて見てみた。
ストーリーは、若く美しい高級娼婦ヴィオレッタが青年アルフレードと出会うところから始まる。アルフレードはヴィオレッタに思いを寄せ、ヴィオレッタもアルフレードを愛するようになるが、アルフレードの父の反発に遭い、ヴィオレッタはアルフレードのために別れることを決意する。意味がわからずに別れを告げられたアルフレードは逆上するもやがて彼女を忘れるために姿を消す。その間にヴィオレッタは、肺病で患い、瀕死の状態になるが、父から真相を知らされたアルフレードが駆けつけ再会を果たすというもの。
この薄幸の若き美女ヴィオレッタを演じるのがエディタ・グルベローヴァで、上演時すでに46歳。しかも恰幅が良く、どことなく春川ますみを連想させる。とてもじゃないが薄幸の若き美女を演じるには無理がある。ちなみにこの『椿姫』、1853年の初演時大失敗だったらしく、なんでもヴィオレッタを演じた主演女優が太っていた(病人に見えない)ために失笑を買ったという逸話が残っている。それを再現するつもりだったわけではあるまいが、僕はこの『椿姫』にも、似たような理由からまったく感情移入できなかったのである。実際に舞台を遠くの席から見ていればそれほど気にならないのかも知れないが、接写が頻繁に出てくるDVDの映像では、これはちょっと致命的ではないかと思う。しかも自ら「こんなに若くして死ぬなんて」みたいなセリフ(歌)があるんだが、悪い冗談にしか思えない。ただしグルベローヴァの歌唱は非常に良く、音だけで聴いたら良かったかも知れないとは思う。それから相手役のアルフレードもなんだか少々病的な印象で華がない。オペラは、聴くだけじゃなく見る要素もあるんだからヴィジュアル面にも気を遣ってほしいなというのが率直な感想である。
『椿姫』自体については、第2幕の第2場にバレエが取り入れられたりしていてサービス精神もあるが、個人的にはやはり過剰なセンチメンタリズムが受け入れられず、途中から完全に飽きていた。やっぱり僕とは相性悪いんかしらね、ヴェルディ。
★★☆参考:
竹林軒出張所『椿姫(映画)』竹林軒出張所『椿姫ができるまで(映画)』竹林軒出張所『喜歌劇「メリー・ウィドウ」(放送)』竹林軒出張所『歌劇「ドン・ジョヴァンニ」(DVD)』竹林軒出張所『日曜劇場 ぼくの椿姫(ドラマ)』