春の惑星(1999年・TBS)
演出:井下靖央
脚本:山田太一
出演:緒形拳、中井貴一、ともさかりえ、いしだ壱成、倍賞美津子、手塚理美、泉ピン子、角野卓造、佐藤慶、洞口依子
名人が作った小品ドラマ 異なる世界で生きるいろいろな人々がとあるきっかけで出会い、そしてお互いの存在が助けになってそれぞれが自身の問題に向き合っていくという、山田太一にありがちな展開のドラマ。とは言っても、ありきたりな感じはなく、またドラマの流れもごく自然なのでまったく違和感はない。
就職活動で忙しい女子大生(ともさかりえ)が、大企業の面接の現場で、面接担当官(緒形拳)に暴言を吐かれるというところから話が始まる。この女子大生、腹に据えかねて、同棲している恋人(いしだ壱成)にその担当官に復讐するよう迫ることで話が進んでいく。
登場人物たちが、それぞれの立場を超えて互いに行き来するようになり、そうして大団円で終わるという、いかにも山田ドラマであるが、しかし随所にくすぐりが散りばめられている上、刺激的な部分も多いので、見ていてまったく飽きることがない。山田太一の職人芸が光るドラマである。
キャストは、主役の2人(ともさかりえ、いしだ壱成)以外、山田ドラマの常連ばかりで、そういう部分もこのドラマの安定感につながっている由縁だろうと思う。演出も山田ドラマでお馴染みの井下靖央で、山田太一らしさを引き出した手堅い演出が光る。結果的に、名人が作った小品といったドラマに仕上がっている。タイトルの『春の惑星』の意味がちょっとわからないが、もしかしたら『猿の惑星』に引っかけたのかしらん。
★★★☆