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竹林軒出張所

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『青春放課後』(ドラマ)

青春放課後(1963年・NHK)
演出:畑中庸生
脚本:里見弴、小津安二郎
出演:小林千登勢、宮口精二、佐田啓二、杉村春子、北竜二、三宅邦子、環三千世、高橋幸治

なんと小津安二郎脚本のテレビ・ドラマ
小津の演出が逆照射される


b0189364_825860.jpg NHKニュースで小津安二郎の幻のテレビドラマが放送されると聞いて、そんなのがあったんかいなとそのときは驚いたんだが、いざ蓋を開けてみると脚本が小津安二郎作(里見弴と共作)ということだった。脚本だけならば映画でも他にあるわけだし(『大根と人参』など)、とりたててどうこう言うこともないんだろうが、テレビ用であることを考えると当時の時代からすると斬新と言える。なんせ当時テレビは映画関係者に「電気紙芝居」と揶揄されていたくらいだし、その後にテレビ時代が来ることをあるいは小津先生、見抜いていたのか、そのあたりはよくわからない。ともかく小津安二郎が書いた脚本に基づいたテレビドラマである。しかもこの脚本、死の8カ月前に書かれたもので、なんでも入院中に病院で書いたらしいのだ。まさに白鳥の歌ってことになる。とは言っても内容自体は実に小津安二郎的な話なんだが。
 ストーリーは、嫁入り前の娘(小林千登勢)に縁談があるが本人はあまり乗り気でないという状況で、彼女の父の旧友たちがそれに関与していくというもので、『彼岸花』とか『秋日和』とかに近い。そもそもこの2作も里見弴が原作だそうで、それを考えると当然といえば当然なのか。しかも登場する俳優陣も北竜二に佐田啓二、三宅邦子と、それぞれの映画と共通している。小津映画の常連、杉村春子も登場している。宮口精二も『麦秋』に出ているし、小津が演出したとしてもおそらくこういう俳優陣になったんじゃないかという面々である。小津が脚本を書いたということで、内容も非常に「小津調」で、そのまま小津映画に移しても違和感はない。つまり演出以外はほとんど小津映画と同等ということになる。だがそのために、小津が演出しない小津映画がこういう風になってしまうというのが如実に画面に現れる。
b0189364_8254711.jpg 何よりこのドラマ、間が非常に悪く、全体的に間延びしていて、しかもセリフとセリフの間に変な空気が流れるというのか、次の相手のセリフを待っていますというような部分が非常に多い。小津映画では、こうしたちょっと無意味な間は切られて、カットバックでつなげていくことが多く、平凡なセリフの中に独特のリズム感や間が生じてそれが面白さにつながるが、そういった要素はない。とは言えこのドラマでもセリフにはなかなかしゃれた味わいがあるのは確かで、なんとなく編集していない小津映画といった雰囲気が残っている。また演出もあちらこちらで中途半端な印象が強く、見ていてちょっとヒヤヒヤする。このドラマを見ると、小津がどれだけ丁寧に絵作りをしているかというのが逆によく見えてくる。小津が演出しない小津映画で、小津演出が印象付けられるというのだから皮肉なものである。
 このドラマ自体、全体的に悪くなく、それなりに楽しく見ることができるが、やはり小津映画のような豪華さは感じられない。また画像も非常に悪い。もちろん当時のテレビの状況を考えると致し方ないが、それでも当時の映画と比べるとあまりにひどい。これじゃあ「電気紙芝居」と呼ばれるのも無理はないなと思う。ま、そうは言っても、考えようによっては、残っていただけ幸いである。この時代のテレビ番組は消え失せているものが多いしね。ともかく、非常に興味深い作品であった。やはり小津映画って良いんですね。感心しました。
★★★☆

参考:
「青春放課後」製作の過程
by chikurinken | 2013-11-16 08:26 | ドラマ
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