夫婦善哉(2013年・NHK)
演出:安達もじり、藤並英樹
原作:織田作之助
脚本:藤本有紀
出演:森山未來、尾野真千子、火野正平、田畑智子、佐藤江梨子、岸部一徳、平田満、富司純子(語り)
真摯なドラマではあるが展開がまどろっこしい

織田作之助の小説『夫婦善哉』が原作のテレビ・ドラマ。『続夫婦善哉』の内容(別府編)も入っており、完全版『夫婦善哉』と言える。
NHK大阪放送開始60周年記念で作られたドラマということで、随分力が入っているのがわかる。セットや小道具などの美術が非常に充実しており、ちょっとした映画並みに金がかかっているという印象だった。おそらくCGを駆使してうまく処理してるんだろうが、それについてはまったく気にならず、セットがすごいなという印象が先に立った。またキャストも好演で破綻はない。中でも主人公の2人(森山未來、尾野真千子)は大熱演で、泣くシーンがやけに多かったがどれも見事。ただ見ていて少々辟易したのも事実で、特に後半の過剰なセンチメンタリズムは(個人的には)いただけない。尾野真千子は、以前放送された朝のドラマ『カーネーション』そのままのキャラクタ―で、
映画版で淡島千景が演じていた蝶子とは少々イメージが違う。ただ尾野真千子の蝶子もそれはそれで成立しているので不満はない。
全体的に間延びしていて進行が遅くまどろっこしいのが難点で、力が入ったドラマだなとは感じながらも冒頭から少々退屈して、結局他の用事をやりながら見ることになった。間延びしているため全体的に薄めの印象で、いっそのこともう少し凝縮して1時間×3回か45分×4回のシリーズにした方が良いんじゃないかとも感じた(実際の放送は1時間×4回)。
それからお多福の像がナレーションをして話を展開するという安っぽい構成も陳腐である。ナレーションはこのドラマについては不要である。全体的によくできてはいると感じたが、このように多少の物足りなさが残るドラマでもあった。オープニングやエンディングまでしっかり注意が払われているなど、真剣に作られた真摯なドラマであることはよく伝わってきたんだが。
★★★☆
参考:
竹林軒出張所『夫婦善哉(映画)』