“電子図書館”の波紋 〜グーグル・ブックス構想をめぐって〜
(2012年・西PolerStarFilms/英BLTV)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
Googleブックス構想を洗い直す
グーグルが、世界中の絶版書籍をスキャンし電子図書館を作るという計画をぶち上げたのはもう随分前になる。世界中で著作者や出版社が反対したこともあって、その後一悶着あった。結局、米国作家協会とは和解が成立したらしいが、細かいことはよく知らない。日本の著作者との関係はどうなっているのかなどもちょっと気になるところではある。
この計画(Googleブックス)、当初はなかなか良さそうな印象があって、改革派と抵抗勢力みたいな図式化と思っていたが、どうも話が違うようで、要はグーグルがパブリックドメインであるべき書籍や、特定の著作者が権利を持っている書籍から独占的な利益を得ようとしていたことが明らかになってきた。実際、過去の著作を電子化して図書館や大学で共有しようという(いわゆる「電子図書館」の)動きは過去もあったことから、このGoogleブックス構想は当初関係者から歓迎されたが、その正体がわかってくると反発が大きくなったというのが真相らしい。
しかもグーグルがすでに行っている(パブリックドメイン書籍の)電子化作業、つまりスキャン作業だが、ものによってはページ全体がきれいにスキャンされていないものもあり、その作業自体が結構ずさんと来ている。つまり、Googleブックスが電子図書館になるというのはあまり期待できない、結局は巧妙に利益を吸い上げるシステムができるだけというのが、現在の多くの人の見解のようである。
ただしこういった電子化の流れはある意味自然であり、誰かが行動を起こすべきものだったのは事実で、そういう点でアメリカの一部の図書館はグーグルのこのプロジェクトを歓迎し、同社と書籍電子化事業について提携しているところもある。結局のところ、グーグルが利益を正しく権利者に分配し適正に使用すれば、多くの人に歓迎されるところとなる、ということ。とは言え、あの企業が信頼に足るかはこれまでの素行ですでに知れ渡っているわけで、今後も監視態勢を怠ることはできないという、そういった内容のドキュメンタリーであった。
グーグルの実際のスキャン作業が紹介されたりしてなかなか興味深い内容ではあったが、グーグルと著作者との現在の関係がどうなっているのかや、アメリカ以外の国で「和解」が行われたのかなど、よくわからない部分も多く、少しストレスが残る番組だった。まあ、考え直すきっかけにはなった。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『抑圧のアルゴリズム(本)』竹林軒出張所『アップル、グーグル、マイクロソフト(本)』竹林軒出張所『ねらわれた図書館(ドキュメンタリー)』