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竹林軒出張所

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『まんがで読破 旧約聖書』(本)

まんがで読破 旧約聖書
バラエティ・アートワークス作画
イースト・プレス

マンガに適した素材

『まんがで読破 旧約聖書』(本)_b0189364_743365.jpg これも『まんがで読破』シリーズの1作。このシリーズ、これまで『戦争論』『エミール』『純粋理性批判』と読んできたが、どれももう一つで正直失望感が大きかった。だが本作は、題材が『旧約聖書』で、内容が神話めいた歴史話であるため、話がドラマチックで割合面白かった。そもそも『純粋理性批判』なんかもっともマンガに適していない題材である。これにトライしたことは評価できるが元々無理があるというものだ。その点、『旧約聖書』は里中満智子など他の作家がマンガ化していることからもわかるように、マンガに適した題材と言える。
 この本で描かれているのは、創世記から出エジプト記、ヨシュア記、士師記、サムエル記くらいまでで、列王記はほとんどない。ただドラマチックな部分は大体載っているので、これで必要十分な気もする。このうちもっとも多くのページが割かれているのが出エジプト記で、全体の1/3がこれに当たる。このエピソードは映画(『十戒』)にもなっているくらいなので、これが重視されるのも当然と言えば当然。全体的に絵は丁寧に描かれており構図も良い上展開もうまくまとめられているため、拙さはまったくない。
 『旧約聖書』のエピソードは海外の有名絵画のモチーフとしてもたびたび取り上げられていて、そういう絵を見ても教養不足の僕はこれまで何が描かれているのかさえさっぱりわからなかったが、この本のおかげで少しはわかるようになった(と思う)。宗教的な関心がまったくない僕のような人間は『旧約聖書』を一生懸命読んだりする可能性がおそらくこれからもないだろうから、こうやってお手軽に読めるというのは非常に良い。ただ今回、2時間程度で全部読んでしまったため、イサク、エサウ、ヤコブ、ヨセフら、登場人物の多くについてはもうすでに識別できなくなってしまった。今度は里中満智子版でも読んでみて復習しようかしらんと感じたりもする。なお、このマンガにはシバの女王やサムソンとデリラのエピソードは収録されていなかった。やはり里中版が必要か。
★★★☆

追記:その後、里中版『旧約聖書 第1巻』を読んでみたが、絵が少々雑で、とりたててどうという印象もなかった。むしろ『まんがで読破』の方がグレードが高いという印象である。

参考:
竹林軒出張所『十戒(映画)』
竹林軒出張所『まんがで読破 クラウゼヴィッツ・作 戦争論(本)』
竹林軒出張所『まんがで読破 ルソー・作 エミール(本)』
竹林軒出張所『まんがで読破 カント・作 純粋理性批判(本)』
竹林軒出張所『まんがで読破 般若心経(本)』
竹林軒出張所『まんがで読破 ダンテ・作 神曲(本)』
竹林軒出張所『まんがで読破 施耐庵・作 水滸伝(本)』
竹林軒出張所『まんがで読破 孫子の兵法(本)』
by chikurinken | 2013-11-08 07:44 |
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