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竹林軒出張所

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『漢文の読みかた』(本)

b0189364_9313656.jpg漢文の読みかた
奥平卓著
岩波ジュニア新書

漢文入門者に最適
楽しい漢文学習の本


 漢文は学生時分に勉強するにはしたが、それ以来すっかり縁遠くなってしまっている。現代人にとってあまり必要ないし、身近にあるというもんでもないしねー。学生時代は『漢文法基礎』などという変わった参考書で勉強したりしたんでそれなりに関心は持ったんだが、もうすっかり遠のいてしまった。江戸時代や明治時代の人々は漢文に素養のある人が多かったようで、自分で漢詩を書いたりしている人もいる。ああいう人たちに対して多少のあこがれもないことはないが、わざわざ勉強しようというほどの気持ちは起きない。
 ところがこのたび、とある縁が生じて、漢文を勉強し直すことになった。そんなわけでちょっと簡単に復習してみようかなというそういう動機で手に取ったのがこの本。この本は「初歩の散文」、「中級の散文」、「詩を読む」の三部構成になっていて、まず漢文の性格から説き起こす。たとえば漢文がもともと竹片や木片に刻まれていたため、極力文字が省略されているということなどが紹介されている。だから中国語レベルでも補って読む必要があり、その点、日本で送り仮名を付けて訓読するような方法は理に適っているらしい。学校で勉強するときもこういうところから説明してくれたら良かったのにと思う。次に漢文で書かれた散文を項立てで紹介していき、それに書き下し文や意味、説明などを付け加えながら話が進んでいく。読んでいるうちに自然に漢文に触れられ、しかも初歩から中級レベルまで本当にごく自然に親しめるようになる。構成はどちらかと言えば単純ではあるが、大きな効果を発揮するように練り上げられている。そういう意味で漢文入門者に最適と言える。
 紹介されている散文もなかなか内容のある面白い題材が多い。このあたりもこの本の魅力である。そのため途中で飽きずに最後まで進むことができた。漢詩を後に持ってきているというのもすばらしい配慮である。詩はどうしても技術的には読みづらいもので、内容も、背景についての解説が必要なものが多い。僕の高校時代は初めの方にいきなり絶句や律詩などの詩が出てきたりしたが、ああいう並べ方は今となってはあまり理に適っていないと感じる。文字通りいきなり絶句してしまうし。それに本書のように佐藤春夫や井伏鱒二の漢詩の翻訳まで添えられているとまた楽しさもひとしおというものだ。本当によく練られているという印象である。著者のプロフィールを見ると高校でもかつて教えていたようだが、こういう漢文に愛情がある(と思われる)人から漢文を教えてもらったら、漢文もまた楽しからずや……と思うがいかん。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『白文攻略 漢文法ひとり学び(本)』
竹林軒出張所『漢文訓読入門(本)』
竹林軒出張所『山椒魚・遙拝隊長 他7編(本)』
by chikurinken | 2013-11-01 09:31 |
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