雁の寺
(1962年・大映)
監督:川島雄三
原作:水上勉
脚本:舟橋和郎、川島雄三
撮影:村井博
美術:西岡善信
音楽:池野成
出演:若尾文子、高見国一、三島雅夫、木村功、山茶花究、中村鴈治郎、菅井きん、小沢昭一
水上勉の怨嗟の声が聞こえる
水上勉原作の同名小説の映画化。全編、堕落した寺の姿が描かれ、子どもの頃寺勤めをしていた水上勉の怨嗟の声が聞こえてきそうな内容である。ストーリーはサスペンスタッチで、同時に官能的な要素もあって、著者(または映画製作者)のサービス精神満開。
高名な日本画家の愛人で、その後寺の住職の愛人になる女性を若尾文子が好演している。こういう役をやると若尾文子の右に出る女優はいない。寺で虐げられる若者と、似たような境遇を持つ愛人によるその若者への共感が話の柱になるが、社会の歪みや貧困などといった面も描かれる。なかなか骨太な話である。
演出は正攻法だが、非常に変わった超ローアングルのショットがいくつか出てきて、映像面で緊張感を生み出すことに成功している。またこの頃の大映映画のご多分に漏れず、大道具などの美術は豪華絢爛で、今では考えられないぐらい作り込まれている。最後のシーン(後日談)がいかにも川島雄三風だが、個人的には要らないんじゃないかと感じた。ましかし、非常に良くできた文芸映画と言えるんではないだろうか。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『五番町夕霧楼 (63年版)(映画)』竹林軒出張所『破戒(映画)』竹林軒出張所『女は二度生まれる(映画)』竹林軒出張所『しとやかな獣(映画)』竹林軒出張所『真実一路(映画)』