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竹林軒出張所

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『ジパングの海 〜深海に眠る巨大資源〜』(ドキュメンタリー)

ジパングの海 〜深海に眠る巨大資源〜(2013年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

「黄金の国」を復活させたい人々の話

『ジパングの海 〜深海に眠る巨大資源〜』(ドキュメンタリー)_b0189364_9243319.jpg 日本の近海には金、銀、レアメタルなどが豊富に眠っているらしく、こういうものを採掘し、近い将来資源大国になろうという意図が日本にあるらしい。
 そもそも日本はかつて、金銀の一大産地であり、歴史上「黄金の国」と呼ばれたことすらある。あのコロンブスも、日本の黄金を目指して西インド航路を進みアメリカ大陸に到達しまったというのは割合有名な話。なぜ日本列島にこれだけ鉱物資源が豊富に埋蔵されていたかというと、それは火山列島であるから。なんでも火山活動で鉱物がマグマの中に集約され、それが地表近くに集められることで鉱山が形成されるらしい(この番組ではそのしくみについてもCGを使ってわかりやすく解説される)。
 陸上でそういうことがあるならば、同様に火山活動が活発な近海で同じことがあっても不思議ではないということで、実は日本列島周辺の海の中にも大層な鉱山が眠っているということが近年明らかになっている。関係者も採掘調査を続け、大量のレアメタルが日本の領海内(沖縄トラフ、南鳥島周辺など)に広範囲にわたって埋蔵されていることが確認されたらしい。そして近い将来これを何らかの形で採掘することになっている……というのがこのドキュメンタリーの主旨である。
 南鳥島の沖合、つまり日本の領海外の公海上にも当然のことながら鉱物が眠っている。資源に国境はないのだ。で、ここの資源の採掘権を狙っている国もあって、この番組では、中国、韓国、ロシアなどがその代表として紹介されている。このあたりは、なんだか意図的に競争を煽っているようであまり良い気持ちはしない。NHKスペシャルで「遅れを取るな、急げ」という論調にするときは、必ずと言って良いほど中国と韓国が進出しているという事例を出す。かれらは仮想敵なのか? こういう煽り方もいい加減やめてほしいものだと思う。
 ま、そういう話は別にして、番組自体はよくまとまっていて、ちょっとニュース解説の延長みたいな印象もあるが、非常にわかりやすかった。日本近海の鉱物についてはよくニュースになっているので、こういうことをまとめてやることにも意義がある。
 ただ、採掘による環境汚染についてはほとんど触れられておらず、これも意図的に隠していたのかなと勘ぐってしまう。環境汚染があまりにひどければ、あらゆる層から反対の声があがるのは目に見えているし、それに鉱山採掘に環境汚染はつきものである。多くの場合どっちを優先するかというトレードオフに落ち着くんだが、今の世の中で大規模な環境汚染が、しかも海上で行われることが許されるというのは少し考えにくい。それを考えると、海上資源にまつわる問題で一番大きいのは結局のところ環境問題になるわけで、(番組の中だけとは言え)そういうのを避けて通って良いものなのか、とても気になる部分である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『大海原のゴールドラッシュ(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2013-10-12 09:25 | ドキュメンタリー
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