『イヴォンヌの香り』（映画）

イヴォンヌの香り（1994年・仏）
監督：パトリス・ルコント
原作：パトリック・モディアノ
脚本：パトリス・ルコント
撮影：エドゥアルド・セラ
出演：イポリット・ジラルド、ジャン＝ピエール・マリエール、サンドラ・マジャーニ、リシャール・ボーランジェ

男目線の恋愛映画

　舞台は1958年のフランス、レマン湖の畔（だと思う）。端的に言えば、ある（伯爵家の）若者が美女に会って別れるというそれだけの話で、ストーリー的には単純である。ただやはりルコント作品、随所に濃厚な官能シーンが出てくる（船上の扇情的なシーン、レストランで足が触れるシーンなどが特に秀逸）。と言っても、ポルノ的なものではなく、割合上品に描かれる。肉体的というよりも精神的な面に重きが置かれていて、それが新鮮と言えば新鮮。ただしどれも男目線で、言ってみれば美女を視線で犯すみたいな部分があって、女性がこの映画を見たらあるいは不快に感じるかも知れない。
　美女、イヴォンヌを演じるのはサンドラ・マジャーニという女優で、この映画がデビュー作のようだ（その後すぐに引退という話も）。映画のイヴォンヌは非常に魅力的で、男を惑わす色香を放っている。
　とは言うものの、ここで描かれているイヴォンヌというこの女性、どういう人間なんだかよくわからない部分がある。性の対象として描くだけでなく人間面も描かれていたらもう少しわかりやすくなっていたかも知れない。この女性だけでなく、他の登場人物もなんだかよくわからないところがあちこちにあって、そういう面でストレスの溜まる映画ではある。というわけで、男目線の恋愛映画としての評価ということになる。ルコントが監督ということを考えると少々もの足りなさも残る。
★★★

参考：
竹林軒出張所『仕立て屋の恋とフェリックスとローラ（映画）』
竹林軒出張所『フェリックスとローラ』（映画）』
竹林軒出張所『髪結いの亭主（映画）』
竹林軒出張所『親密すぎるうちあけ話（映画）』
竹林軒出張所『橋の上の娘（映画）』
竹林軒出張所『暮れ逢い（映画）』
竹林軒出張所『歓楽通り（映画）』
竹林軒出張所『ぼくの大切なともだち（映画）』