髪結いの亭主
(1990年・仏)
監督:パトリス・ルコント
脚本:クロード・クロッツ、パトリス・ルコント
撮影:エドゥアルド・セラ
美術:イヴァン・モシオン
出演:ジャン・ロシュフォール、アンナ・ガリエナ、ロラン・ベルタン、フィリップ・クレヴノ
男の妄想が映画になった
パトリス・ルコント監督の出世作。今回見るのは二度目だが、前に見たときほど強烈な印象はなかった。
原因の一つはストーリーが少々安直に感じられたことで、あまりにも単純化されているんじゃないかと思った点。とにかく細かい説明を省いて、自分の妄想通りに話を作ってみましたという感じのストーリーで、おとぎばなしみたいに単純である。また、スケベ心あふれる男目線の映像が随所に散りばめられていて、そういう点も男の妄想を映像化したという印象につながる。ただそうは言っても丹念に作り込まれているのも確かで、トータルで見ると質は高く、そのあたりにルコントの職人技を感じる。この映画、90分弱という短めの映画で、思い返すとどのシーンもスナップショットみたいな印象が残る。短編小説みたいな味わいと言っても良いかも知れない。
タイトルの「髪結いの亭主」とはそもそも、仕事をせずに妻のかせぎに頼って暮らす男を指す言葉だが、この映画では文字通り、理容師の夫が主人公。しかもこの男、「髪結いの亭主」という言葉がぴったりの生活を送っている。この「髪結いの亭主」という言葉、僕は日本の言葉だとばかり思っていたんだが、フランスにもそれに相当する概念と言葉があったということだ。こういう事実は、この映画で初めて知ったのだった。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『仕立て屋の恋とフェリックスとローラ(映画)』竹林軒出張所『フェリックスとローラ』(映画)』竹林軒出張所『親密すぎるうちあけ話(映画)』竹林軒出張所『橋の上の娘(映画)』竹林軒出張所『ぼくの大切なともだち(映画)』竹林軒出張所『イヴォンヌの香り(映画)』