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竹林軒出張所

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『いねむり先生』(ドラマ)

いねむり先生(2013年・テレビ朝日、ホリプロ)
演出:源孝志
原作:伊集院静
脚本:源孝志
出演:藤原竜也、西田敏行、波瑠、阿部サダヲ、谷原章介、余貴美子、宇梶剛士、美波

人間の生と死、救済、愛を描く純文学ドラマ

『いねむり先生』(ドラマ)_b0189364_8342410.jpg 伊集院静の同名小説が原作のドラマ。この小説、つい先日どこかの書評で読んで興味を持っていたところだったが、実に良いタイミングでドラマが放送された。ドラマで済むのなら小説はあまり読みたくないところなんで助かった。ドラマ自体も非常に真摯に作られていて、なかなかよくできていた。
 小説とのバランスはどうなっているかわからないが、とりあえずそんなことはどうでも良い。少なくともドラマの世界で完結していて、近頃珍しい高い水準のドラマになっていたことは確かである。こういうタイプの純文学風のドラマが9時枠で放送されるというのも意外で、テレビ朝日、随分がんばったなと思う。
 さてドラマだが、タイトルの「いねむり先生」は、作家の色川武大、つまり阿佐田哲也の通称で、要するに作者の伊集院静と色川武大の交流を描いた私小説風の作品である。伊集院静は、ご存じの方も多いと思うが、女優、夏目雅子の元夫で、結婚後しばらくして夏目雅子が白血病で死んだために、その後自暴自棄になって破滅的な生活を送る。そんな折、色川武大に出会って、一緒に博打の旅をするようになり、やがてどん底から立ち直るきっかけを掴むことができた。おそらくこのドラマから推測すると、伊集院静はアルコール依存症だったようだが、時折見るという変な幻覚もきちんと映像化されていて、なかなか力が入っていた。
『いねむり先生』(ドラマ)_b0189364_835481.jpg 「いねむり先生」こと色川武大は西田敏行が演じるが、最初画面に出て来たときは色川武大に非常に良く似ていて、そういうこだわりも伝わってきた。色川武大の広い交友関係を反映して、他にも黒鉄ヒロシ(黒上)や井上陽水(井野)まで出てくるが、こちらも阿部サダヲと谷原章介が好演していた。夏目雅子(マサコ)を演じた波瑠って人も夏目雅子によく似ていてビックリ。伊集院静ことサブローは藤原竜也が演じるが、こちらは当然まったく似ておらず、端正な伊集院像になっていた。キャスティングは実によく、それぞれの人物像が魅力的である。演出も手堅く、まったく不満はない。
 ドラマのテーマは、人間の生と死、救済、愛などで、こういうところも純文学風だが、どれもしっかり描かれていて、主張もしっかりしている。本来であれば映画でやっても良いくらいの水準で、しかも内容的に映画向きと思える作品なんだが、これをよく民間放送がゴールデンで放送したなと思う。テレビ朝日のファインプレーと言っても良いかも知れない。ちなみに、予算が余計かかったせいか知らないが、早々にDVD化されるそうだ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『麻雀放浪記(映画)』
竹林軒出張所『拝啓 色川先生(ドラマ)』
竹林軒出張所『「金縛り」の謎を解く(本)』
竹林軒出張所『京都人の密かな愉しみ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『漱石悶々(ドラマ)』
竹林軒出張所『スローな武士にしてくれ(ドラマ)』
竹林軒出張所『エドガー・アラン・ポー 200年目の疑惑(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2013-10-01 08:35 | ドラマ
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