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竹林軒出張所

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『なつかしき海の歌』(ドラマ)

なつかしき海の歌(1975年・TBS)
演出:福田新一
脚本:山田太一
出演:加山雄三、香山美子、浅田美代子、吉田拓郎、加藤武、岡田英次、垂水悟郎

放送のあり方を問う骨太ドラマ
だが浅田美代子と吉田拓郎の共演の方が目を引く


『なつかしき海の歌』(ドラマ)_b0189364_914331.jpg 1975年放送の山田太一脚本のドラマ。
 舞台はテレビ局で、とある国の大統領が飛行機事故で死んだため、放送される予定のスペシャルドラマが報道番組に差し替えられることが決まる。ただこのスペシャルドラマ、ディレクター(加山雄三)が別の部署に異動になる直前のドラマということで、そのディレクターにとっては非常に思い入れがある作品。また、初めてテレビドラマに出演した女優の卵(浅田美代子)にとっても是非放送してほしいドラマである。一方で、差し替えられる報道番組を制作したのは、永らく局内で冷や飯を食わされていた女性ディレクター(香山美子)で、これをきっかけに表舞台に戻ることを期待している。局外から見るとたかだか番組の差し替えであるにもかかわらず、放送にかかわるさまざまな人々の思惑が交錯し、やがてこれが事件に発展するというストーリー。
 TBSという、いわば放送局サイドから、テレビの内幕、放送の裏側などが暴露されている点が非常に興味深く、しかも放送のあり方に対して一石を投じているのも意欲的である。放送のあり方を突き詰めるという点では『真夜中のあいさつ』とテーマが共通する。この頃、山田太一が放送について考えるところが多かったのかそのあたりはわからないが、結果的にこれも見応えのある作品になっている。キャスティングは、なんといっても浅田美代子と吉田拓郎の共演が目を引く。このドラマの2年後に2人は結婚(やがて離婚)……てことは、このドラマをきっかけに吉田拓郎が浅田美代子に接近したのか。いずれにしても2人の共演シーンは非常に多い。なお、タイトルの『なつかしき海の歌』は、劇中で差し替えられることになったスペシャルドラマのタイトルである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『真夜中のあいさつ(ドラマ)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
by chikurinken | 2013-09-13 09:14 | ドラマ
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