真夜中のあいさつ(1974年・TBS)
演出:大山勝美
脚本:山田太一
出演:せんだみつお、杉浦直樹、あべ静江、岩崎加根子、森塚敏、白石冬美
小品ドラマの佳作 山田太一脚本の単発ドラマ。
落ちぶれたラジオのディスクジョッキー(杉浦直樹)が、自分の深夜番組で、1人の聴取者(せんだみつお)の恋愛を応援する企画を始めるという話。聴取者達は、その恋愛に対して応援したりアドバイスしたりするというふうに話は進む。ここまで書くと『電車男』みたいで、その辺については山田太一本人も語っているが(
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』参照)、ただ応援するだけで終わらないのが山田ドラマ。ラジオ番組、ひいてはマスコミのあり方にまで突っ込んでいて、特に主人公の2人がラジオの放送上で闘わせる放送のあり方についての議論がスリリングで良い。
ストーリーはごく自然に流れるが、全体に古さが漂う。特にラジオ番組の再現が今聴くと非常に恥ずかしい。この頃こんな恥ずかしい番組が一般的だったんだろうかと考え込むが、よくよく考えると、さすがにこんなのはなかったよな……と思う。この頃ラジオよく聴いていたんだ、そう言えば。
ちなみにラジオ番組に翻弄される主人公を演じるのは、当時ラジオ(のエロ番組)で非常に人気を博していたせんだみつおで、このあたりのキャスティングは非常に面白い。またあべ静江も、歌手デビューする前はラジオのDJとして人気があったということで、そういう2人がラジオ番組のあり方について討論するというのは、楽屋落ちみたいな要素もあって面白いものだ。せんだみつおはちょっと冴えない男を好演、あべ静江も謎の美女として存在感を発揮していた。画面に現れるファッションや風俗で時代を感じてしまう作品だが、よくできた小品ドラマであった(時間は1時間15分程度)。
昭和49年度(第29回)芸術祭大賞受賞
★★★☆参考:
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』