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竹林軒出張所

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『想い出づくり。』(1)〜(14)(ドラマ)

想い出づくり。(1981年・TBS)
演出:鴨下信一、井下靖央、豊原隆太郎
脚本:山田太一
音楽:ザンフィル、小室等
出演:森昌子、古手川祐子、田中裕子、柴田恭兵、佐藤慶、児玉清、谷口香、前田武彦、坂本スミ子、加藤健一、佐々木すみ江、田中美佐、根津甚八

この時代、
若い女性はこんなになめられていたのかという驚き


『想い出づくり。』(1)〜(14)(ドラマ)_b0189364_863798.jpg 山田太一脚本の1981年のドラマ。このドラマが放送された頃、僕はテレビを持っていなかったため、このドラマ、それからその裏番組の『北の国から』はリアルタイムで見ていない。再放送もなかなかされなかった(『北の国から』は何度も再放送された)ので、10年ほど前にシナリオ本(大和書房刊『山田太一作品集12 想い出づくり』)を買って読んだ。ただあまり印象に残っておらず、DVDを買ってでも見たいというほどの情熱はなかったが、今回TBSチャンネルで放送されたため見ることになった。
 で、やはりというか、シナリオを読んだときとあまり印象は変わらず、もう一つ、こうグッとくるものがない。それに登場する若い女性が愚か者扱いされているようで、なんだか見るに堪えない。当時の女性の扱いはこんなもんだったんだろうか(そういう実感はあまりないんだが)。なんでも山田太一は、当時の女性に対する差別的な価値観に反対するためにこのドラマを書いたということだが(竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2 続き(補足)』参照)、それでも、これはひどいんじゃないかと思えるような箇所が随所に出てくる。当時の社会全体がそうだったんだろうか。そもそも「女は若いうちに結婚してなんぼ」みたいな価値観に違和感を感じる。もちろんこういう考え方がなければこのドラマ自体が成り立たないんだが。
 さて、このドラマ、23歳の3人の女性が主人公の「日本初の群像ドラマ」だということである。かつてあるシナリオ作家が「主人公が複数なんてのは成立し得ない」と言っているのを聞いたことがあるが、このドラマはドラマとしてきちんと成立している。展開自体はよくできていると思う。だがところどころにちょっと首をかしげたくなるような設定があって(たとえば自分を乱暴した男とその後恋人になるとか)、今見るとレイプにストーカーにセクハラと犯罪扱いされるようなことがドラマの筋立てとして普通に出てきて(犯罪として描かれているわけではない)、こういうものもものすごく違和感がある。今の時代とは非常に価値観がかけ離れていて、山田ドラマによく見られるような普遍性も感じられない。もっとも、逆に当時の風俗がよく描かれているということができるかも知れない。
 ストーリーは、3人の女性が結婚前に想い出(激しく燃えるような恋とか)を作りたいと考えるところから始まり、なんやかんやがあってから、予定調和的に無理矢理収束させてしまったというようなドラマになっている。今でも一部で人気が高いドラマらしいが、正直言って取るに足りないドラマという印象しか残らなかった。
 一方キャストは豪華で、主役の森昌子、古手川祐子、田中裕子もそれぞれ存在感を見せているが、脇役の児玉清、佐藤慶、加藤健一が特に好演。根津甚八は最終回にゲスト的に登場し、田中美佐(田中美佐子)はこれがドラマ初登場らしい。また、小室等作曲の音楽(ザンフィルのパンフルート演奏)が随所に流れて雰囲気を盛り上げている。なお、この音楽、現在発売中のCD『TVミュージック・セレクション イン・メモリー・オブ・40イヤーズ』で聴くことができる。
★★★

参考:
TBSチャンネル『想い出づくり。』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2 続き(補足)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
by chikurinken | 2013-09-09 08:07 | ドラマ
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