栄光の旗 前編・後編(1965年・TBS)
演出:橋本信也
脚本:笠原和夫
出演:鶴田浩二、岸田今日子、千葉真一、南宏、関口銀三
通り一遍のドラマだが、これも希少価値がある
「TBS開局十周年記念番組」ということでこれも随分古いドラマ。東芝日曜劇場の1本で、今回放送された映像も四隅にブラウン管の丸みの跡が付いていた。ということで、放送時に(誰かが)テレビ放送を8mmフィルムかなんかで撮影したものではないかと推測される。こちらも画像は非常にきれいである(
竹林軒出張所『判事よ自らを裁け(ドラマ)』参照)。
さてこのドラマ、知る人ぞ知るバロン西の後半生を描く作品。バロン西とは、西竹一という軍人で、1932年のロスアンゼルス・オリンピックの馬術競技で金メダルを取った人。当時アメリカで人気が沸騰したらしく、男爵だったこともあって「バロン西」と呼ばれて、ハリウッドの俳優たちとも親交があったという。
そのバロン西がロスアンゼルス・オリンピックで優勝してから1945年に硫黄島で玉砕するまでを、約2時間のドラマにしたのがこの作品。西を演じるのは、特攻隊の生き残り、鶴田浩二で、妻の武子は岸田キョンキョンが演じる。西のさまざまなエピソードが時系列で出てくるが、テーマが少し曖昧だったこともあって、ドラマとしてはメリハリが少ない。西の描き方は通り一遍で、他人に対しては人情家で妻に対しては亭主関白。そしてそれが肯定的に描かれている。魅力的な西像を作ろうとしているのはわかるが、正直あまり伝わってこない。
硫黄島での戦闘中に、米軍から「馬術のバロン西、出てきなさい。世界は君を失うにはあまりにも惜しい」という呼びかけがあったというエピソードは期待どおり出てくるが、やはり終始西の生涯をさらっただけという感じで終わってしまった。意欲的なドラマだったかも知れないが、ちょっと空回りしているという印象であった。なおバロン西は、クリント・イーストウッドの映画『硫黄島からの手紙』で伊原剛志が演じているらしい。この映画、見ていないので詳しいことはよくわからない。
★★★参考:
竹林軒出張所『判事よ自らを裁け(ドラマ)』竹林軒出張所『マンモスタワー(ドラマ)』竹林軒出張所『「星の王子さま」の誕生(ドキュメンタリー)』